17歳から6年続いたDVから逃れ「助ける側」に 「自分が変われば、未来変わる」


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「今、私と同じような経験をしている人に希望を持ってもらいたい」と話す平良梨菜さん=2月18日、豊見城市高安

 「自分が変われば未来を変えられる」。そう力強く語るのは、豊見城市高安でエステサロン「Salon,Infinity(サロンインフィニティ)」を経営する平良梨菜さん(30)だ。平良さんは高校中退後、17歳の時に出会った16歳年上の男性から、約6年にわたりドメスティックバイオレンス(DV)を受けていた。2012年に男性が逮捕され、暴力のない日常を取り戻した。 (嶋岡すみれ)

 2017年に結婚した夫(29)とともに4人の子どもを育てながら、21年3月にサロンをオープンした。夢は「ママたちが子どもをだっこしながらでも働ける場所をつくること」。実現に向け、前に進み始めている。

 ■日常的な暴行

 DVの始まりは、初めて男性の自宅に行った日だった。そこには、若い女性と2歳ごろの男の子がいた。男性の妻とその息子だった。「結婚しているなら別れる」。平良さんがそう告げて家を出ると、男性が追いかけてきた。逃げようとすると、腕をつかまれてその場で首を絞められた。「逆らったらやられる」。瞬時に悟り、抵抗をあきらめた。そこから、平良さんと男性、その妻と息子4人での生活が始まった。

次女の親子健康手帳(母子手帳)。初めて妊婦検診に行ったのが妊娠22週の時だった。(平良さん提供)

 平良さんと妻、それぞれが日常的に暴行され続けた。金属バットや石のブロックなどで殴られることは珍しいことではなく、次第に暴力を異常だと感じなくなっていった。

 男性は精神疾患を患っており、生活保護が主な収入源だった。通院やスーパーなど、どこに行くにも一緒。携帯は壊され、外部との交流手段は遮断されていた。

 隙を見て3~4回逃げたことはある。その度に中学卒業以来、疎遠になっていた母の元へと向かった。だが母は、全身あざだらけの姿を見ても「どんな目に遭っても自分でくぐり抜けなさい」と告げ、男性に居場所を知らせた。

 性行為はいつも無理やりで、嫌悪感しかなかった。避妊の要望も無視され続けた。2010年に18歳で長女を、11年に20歳で次女を出産した。その間には中絶も経験した。男性は妊娠中にも暴力を振るった。次女を妊娠中には、妊娠22週になるまで妊婦健診に行くことも許されなかった。子どもが生まれると、男性は泣きやまない子どもの口を手でふさいで息を止めるなどの虐待行為も繰り返した。

 ■通報きっかけに

 逮捕のきっかけは、女子高生の通報だった。2012年7月、公園の駐車場に止めていた車の中で、男性の暴行が始まった。血だらけになっている平良さんを、車の外を通りがかった女子高生3人が見た。
 
 「離れるなら今しかない」。とっさにそう確信して車を降り「ごめん、警察呼んで」と助けを求めた。通報から数分後、警察が車を取り囲み、男性にその場で手錠をかけた。警察によると、男性は勝手に平良さんと籍を入れていた。男性にとって6回目の結婚だった。

 「今思えば、逃げられる瞬間は何度かあったし、助けようとしてくれた人もいた。でもそもそも逃げるという選択自体がなくなっている精神状態だった。見つかった時の暴力や家族への危害が怖かった」と振り返る。それでも勇気を振り絞って行動したことで、生活は大きく変わった。

 逮捕後、当時児童相談所で保護されていた子どもたちを引き取るため、昼夜仕事をして必死にお金をためた。2014年に引き取り、ようやく暴力の恐怖から離れて子育てができるようになった。

 生活を立て直していくうちに、同じような境遇にいる人たちのことを考えるようになった。「DVを受けている子は親との関係が悪いことも多いから逃げ場所がない。子どもがいると働くことも難しく、生活のためにDVの加害者から離れられなくて、暴力を受け続ける。そうした子たちの逃げ場、受け皿をつくりたい」。今は夢の実現に向け、スタートラインを切ったところだ。

 「経験は財産だから無駄にしたくない。今私と同じような目に遭っている人に、私のような経験をしても、笑って人生を送れるって知ってほしい。助けてくれる人は必ずいるし、私も助けられる人になりたい」と明るく笑った。