【識者談話】トートーメー継承、家族間で話し合う環境づくりを(沖縄女子短期大准教授・波平エリ子氏)


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
波平エリ子氏(沖縄キリスト教学院大教授)

 トートーメー(位牌)を巡る文化には、女性にとって差別的な二つの側面がある。一つは父系血縁を大切にする観点から、女性を排除してきた経緯があること。もう一つは、行事の準備などの対応が女性に偏っている点だ。女性が夫の門中に入れるのは死後とされ、跡継ぎを産まないと離縁させられた。出戻りの娘は実家の門中にも入れず「イナググヮンス」(女性の初代元祖)として一人、位牌にまつられた。だがイナググヮンスの位牌を継承することは禁忌だった。

 しかし、進学や就職で居住地の広域化で地縁社会は希薄になり、少子化が進んでいる。位牌継承の禁忌観念は遅かれ早かれ行き詰まる。アンケートからは「誰が継いでもいい」という考え方に変化しつつある。位牌の継承を考える時にはトートーメー文化の良さを再認識し、理解した上でベストな方法を家族で話し合ってほしい。トートーメーに関する行事の準備や出費が女性や長男家の負担になっていた。女性に負担を強いるのではなく、家族で役割を平等に分担してほしい。一方で文化を大事にしたいという声もあった。主体的に考えて行動しない限り、問題は解決できない。家族間で話し合う環境づくりも大切だ。 (民俗学)