〈98〉病理診断と病理医 治療や医療の質向上貢献


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 皆さまは病理診断および病理診断を行う医師(病理医)のことをご存じでしょうか? ご存じの方は小説がきっかけでしょうか? あるいは、現在、病理医を題材にした漫画が連載中ですが、漫画がきっかけでしょうか?

 もしくは、2020年NHK大河ドラマのメインキャスト中で最年少の国民的人気若手芸能人が、「将来病理医になりたい」とテレビで語ってくださったことがありましたが、それがきっかけでしょうか?

 近年、小説、漫画や国民的人気若手芸能人のおかげもあり、病理医が少しずつ世間の皆さまに知られるようになってきました。

 病理医は、顕微鏡をパートナーとして、病理診断(主に組織診断・細胞診断)を行うのが仕事です。

 消化器内科、呼吸器内科、皮膚科、産婦人科などの外来や外来検査を受診した際、体に生じた「できもの」や、かゆみを伴って赤く腫れたところから病変の一部を採取したもの、あるいは、外科手術で摘出された臓器の病変に関して、どのような病気か、良性の病気か悪性の病気かの判断を行い(一般に広く知られている「がん」は悪性の病気です)、必要に応じて、患者さんの身体に病気が残っていないかの評価も行います。

 病理医の仕事としては、他に病理解剖があります。これは、未来の医療のため、臨床医が病院で亡くなられた患者さんのご遺体から学ばせていただく貴重な機会になっています。病理解剖の結果(病理医が解剖させていただきます)、病気の種類、病気が及んでいる範囲や治療効果の評価など、病気の詳細や死に至った経緯に関する検討を行います。

 病理診断は、治療方針の決定や手術の妥当性の評価など、医療の根幹に関わる医療行為であり、的確な病理診断はさまざまな疾患の治療の基本となります。

 病理医の本分は、病理診断を通して、患者さんの治療や医療の質の向上に貢献することです。患者さんに直接関わることはあまりありませんが、地域の医療を支える、病理診断と病理医の存在を知っていただければ幸いです。

(和田直樹、琉球大学病院 病理診断科)