てだこ浦西駅開発「不協和音」なぜ? 企業撤退や縮小…土地組合と浦添市に温度差


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開発が進むてだこ浦西駅周辺=3日

 【浦添】モノレールてだこ浦西駅周辺地区への企業誘致を巡って、地権者でつくる土地区画整理組合と市との対立が表面化している。浦添の東の玄関口として「沖縄、アジアを代表するまちづくり」を目指す考えは一致しているものの、地権者の意向を最優先する組合と分散型エネルギーシステムの構築を第一とする市との温度差は大きい。事態打開が遅れれば地区全体の開発に支障を来す可能性もある。

 ■21街区

 浦西駅周辺開発は昨今の地価高騰に加え、コロナ禍の影響により、さまざまな事業計画が変更を余儀なくされた。都市型ホテル建設が計画された駅南側の21街区(保留地)は組合と事業者側との協議が不調に終わり、計画は現在白紙に。組合は近く事業者を再公募する考えだ。

 開発の目玉とされるイオン琉球と住友商事による大型商業施設は開業時期に2年の遅れが生じ、規模も当初計画から大幅に縮小する見込みだ。さらに複数の大型マンション計画も自己利用を希望する地権者の存在もあり、多くが立ち消えた。内情を知る関係者からは「沖縄を代表するまちづくりどころか、どこにでもある普通の街になる可能性が高い」と悲観的な声が漏れ聞こえる。

 ■意見書

 今回、市と組合の対立の発端となった駅北側の14街区を巡る企業誘致の難航もコロナ禍が大きな要因となっている。14街区は組合作成の換地規定に基づきスポーツフィットネス施設が立地し、隣接する浦添分散型エネルギー社が電気や温水などを供給する予定だった。しかし、コロナを理由に進出に前向きだった企業2社が相次いで撤退を決め、14街区の事業計画は1年以上宙に浮いた状態となっていた。

 そんな中、事務所ビル建設を希望する全国展開の大手企業2社が昨年秋に地権者を通じて名乗りを上げ、現在、交渉を進めている。ただ、浦添分散型エネルギー社に2億円を間接出資した市は、スポーツ施設が建設されなければ同社の経営安定化に支障を来すとして組合に昨年10月と今年2月、スポーツ施設を建設する企業を誘致するよう求める意見書を提出。併せてプール付き複合ビルの建設意向を持つ県内企業がいることを伝えた。

 組合の又吉眞孝理事長は、市が説明するプール付き複合ビル建設を希望する会社について「理事会に対して正式に提案されたものではない。何より、フィットネス事業社が撤退する時に市は引き留めず、その後もずっと放置してきた」と反論し、地権者と大手企業2社との交渉を見守る方針を示す。

 ■全会一致

 市と組合の認識にずれが生じる中、市議会は8日、市と同様に組合側にスポーツ施設を建設する企業の誘致を求める決議を全会一致で可決した。議会が一民間団体に決議を出すのは極めてまれで、当初は慎重論もあったが、最終的にはまちづくりに対する危機感から市と歩調を合わせた。議会の決議もあり、市は早急に組合と地権者を交えた3者協議の場を設ける考えだ。

 市議会で今後の対応について問われた松本哲治市長は「東の玄関口にふさわしいまちづくりを実現するのがわれわれの使命だ。危機感を持って地権者と組合の意向をしっかり聞きながら、計画が遅延することないよう全力で取り組む」と語った。
 (吉田健一)