島しょ部での安定的な情報通信基盤の構築に向け、県は2022年度から北大東村と南大東村間の約18キロに海底光ケーブルを整備する事業を開始する。総事業費は一括交付金を活用した50億円を想定し、25年度に完了予定。完成すれば、市町村役所・役場がある約20の離島すべてで、双方向からケーブルがつながる「ループ化」が達成する。災害などで一方のケーブルが断線しても、もう一方で補って通信障害を防ぐことができ、安定的な通信環境が構築される。
本島と北大東村間では現在、約410キロの海底光ケーブルの整備が進んでおり、3月中に完成する。まだケーブルが整備されていない北大東村では、南大東村の基地局から無線中継する形を取っており、通信環境は天候などの影響で不安定になる場合もある。
県によると、18年7月に本島~多良間島間の海底光ケーブルが断線する事案があったが、もう一方の本島と宮古島間からループ化されていたため通信障害は発生しなかった。断線による通信障害が発生した場合、携帯電話やインターネットが全面的に使えなくなり、住民生活に重大な影響を及ぼす可能性もあった。
県は22年度からの新たな沖縄振興計画素案で「海洋島しょ圏の新たなインフラとして、第5世代移動通信システム(5G)など次世代の情報通信基盤の整備に取り組む」としている。県は高速大容量の通信環境を整備し、学校でさまざまな情報通信技術(ICT)を活用するギガスクール構想の実現や、リゾート地でテレワークをする「ワーケーション」などの推進につなげたい考えだ。
県情報基盤整備課の担当者は「情報通信環境の基盤整備は、都市部から物理的に離れている離島の不利性解消につながる。今後は、役場がない久高島などでも市町村や事業者と連携し、整備を進めていきたい」と話した。
(梅田正覚)