沖縄振興開発金融公庫と琉球大は17日、新型コロナウイルス感染症が県内市町村財政に与える影響に関する共同調査結果を発表した。市町村の貯金に当たる「財政調整基金残高」について、2021年度は全市町村の6割以上を占める27自治体が前年度比で減少する見込みであることが明らかになった。21年度末の全体の残高見込み額は、20年度末の約775億7千万円から約36億5千万円減の約739億1千万円となっている。減少の主な要因としては「新型コロナ対応事業のため」が11自治体と最も多かった。
新型コロナ対応事業については、総額が約190億円に上った。事業の内訳は「感染拡大の防止」が約63億円で全体の33%を占めた。「雇用の維持と事業の継続」が約58億円(31%)、「経済活動の回復」が約50億円(27%)と続いた。
新型コロナワクチン接種の取り組みでは、接種に掛かる人手について「大幅に不足していた」「やや不足」にそれぞれ15自治体が回答しており、7割以上の自治体で人出が不足していることが明らかになった。
調査は沖縄公庫と琉大の獺口浩一教授、同ゼミの学生が前年に続き実施した。21年11月25日~12月17日の期間に県内全41市町村にアンケートした。回収率は100%。
前年調査は20年度末の財調基金残高が前年比18・5%減少するとしていたが、実際は2・7%減にとどまった。21年度末の見込みは前年比で約5%減とマイナス幅は拡大するも、国からの財政支援で自治体運営への影響は最小限にとどまっているとみられる。税収はコロナ禍を背景に地方消費税交付金を除き軒並み減少基調となっている。
財政運営については、歳入の課題として、最多の13自治体がコロナによる税収の鈍化や徴税率の低下を挙げた。歳出の課題は、16自治体が義務的経費の増加を挙げた。調査報告書では、(1)地域経済に配慮した「短期」的視点(2)財政健全化に配慮した「中長期」的視点(3)ポストコロナ時代に対応―の3点を踏まえた自治体経営を提言している。
獺口教授は「国による資金投入で何とか保たれているが、コロナ前から続く課題も含めて自治体の苦悩が見える。抱える課題と早期に向き合うことが求められる」と指摘した。 (小波津智也)