アジアの伝統芸能、継承の工夫や課題は? 沖縄と5カ国がオンライン座談会


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オンラインで互いの国の無形文化遺産について言葉を交わす参加者=2月9日、浦添市の国立劇場おきなわ大稽古室

 国立劇場おきなわと国際交流基金アジアセンターの共催企画「無形文化遺産でつながるアジアの芸能 座談会」が2月9日、同劇場大稽古室であった。国連教育科学文化機関(ユネスコ)の「無形文化遺産」代表一覧表へ記載(登録)された芸能を持つ、沖縄とインド、インドネシア、タイ、ベトナム、マレーシアの芸能の専門家が、自国の芸能について意見交換した。司会と進行を国立民族学博物館の福岡正太教授が務めた。

 1部で各国の芸能を映像と共に紹介し、2部で互いの芸能の印象や、普及するための課題を述べ合った。

 ベトナムの古都フエの宮廷雅楽「ニャーニャック」を紹介したホアン・チョン・クオン氏は、「若い人も(演目の意味が)分かるようにしている。子どもたちも歴史を理解して楽しんでいる。小中学生に対してコンテストを行い、もっと学びたい、理解したいという気持ちを育むよう心掛けている」と話した。

 タイの古典舞踊家のスックサンティ・ウェーンワン氏は、タイの古典舞踊劇「コーン」について「子どもたちや外国人が見ても分かり、興味を持ってもらえるよう、パフォーマンスを理解しやすくする動きがある」とした。その上で伝統をアレンジし、現代の観客に理解してもらえるよう工夫する重要性を述べた。

 インドの古典劇「クーリヤッタム」の指導者のゴーパル・ヴェヌ氏は娘で弟子のカピラ・ヴェヌ氏と参加した。「将来はあまり悲観してはいないが、収入の安定は大きな問題だ」と課題を述べた。

 マレーシアの芸能団体などと連携を図る非営利団体の創設者、エディン・クー氏は、同国の伝統歌舞劇「マ・ヨン」をはじめとする、アジアの伝統芸能継承に必要な姿勢を語った。「政府のサポートは重要だが、演者の自治、自分たちでやっていくという気持ちも大事だ。何もかもが西洋化し過ぎている。アジアで連携を取り、文化を広めるという気持ちでやっていきたい」と連帯を呼び掛けた。

 インドネシアの人形劇「ワヤン・ゴレック」の出演や演出を手掛けるエンド・スアンダ氏は「若い人は他のエンターテインメントを好む。人形劇のステージを作る場所もなくなりつつあり、努力しないといけない」と厳しい現状を語った。一方で「学校教育においては芸術のカテゴリー化を問題と捉えている。伝統はアイデンティティーの一部だ。政治や宗教などの観点から“何が正しいのか”という考えにとらわれないようにすべきだ」と警鐘を鳴らした。

 沖縄からは国立劇場おきなわの嘉数道彦芸術監督と金城真次芸術参与が参加し、芸能を通じた交流を提案した。

 「無形文化遺産でつながるアジアの芸能 プロジェクト」特設ページで、座談会に参加した国の芸能の解説と動画を順次公開する。
 (藤村謙吾)