多様性認める学校づくり、外国人と共に生きる上で大事なことは? ソーシャルワーカーシンポ㊦


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 2月26日にシンポジウム「沖縄における多様性尊重への課題―ソーシャルワーカーが取り組むことは―」(県ソーシャルワーカー協議会主催)がオンラインで開催された。「第10回県ソーシャルワーク学会・社会福祉公開セミナー2021」の一環。21日付紙面に続き、登壇した県スクールソーシャルワーカーの山野宏氏と沖縄キリスト教学院大准教授で沖縄NGOセンター代表理事を務める玉城直美氏の講演の内容を紹介する。(嶋岡すみれ)


山野宏さん 排除しない学校作る
 

県スクールソーシャルワーカーの山野宏さん

 県のスクールソーシャルワーカーをしている。担当中学校の場合に限ると、生徒数は約680人で、不登校生徒数は約60人。不登校以外の課題により支援を必要としている生徒が約20~30人。約1割の生徒(世帯)はソーシャルワーク的サポートを必要としている。その課題はさまざまだ。

 現状としていわゆる「非行系」と言われる生徒に関してつなぎ先や居場所確保ができていない。彼らが触法行為をした場合は一緒に警察に行くなどするが、その後学校での居場所がない。この中には進学を希望しない生徒もかなりいる。

 彼らはさまざまな人と話ができないまま、狭いコミュニティーの情報で「学校は行かなくていいや」となってしまう。広い意味で進学しないデメリットを理解していないことも多い。卒業後に犯罪に関わるなど不適切な環境に行ってしまう子の支援が不十分だ。

 多様性を認めるのであれば、現在触法行為があったり、学習を望まず学校に来ていなかったりする生徒を、排除しない土壌を作っておくことが必要だ。それはソーシャルワーカーの大切な役割だと感じている。いろんな立場でいろんな選択をした子たちがどんな状況であっても受け入れる学校の居場所、土壌を作ることを目指したい。


玉城直美さん 「出会えば兄弟」精神で
 

沖縄キリスト教学院大准教授 沖縄NGOセンター代表理事の玉城直美さん

 2020年度の県多文化共生推進調査事業の報告書によると、同年時点で、沖縄では190以上の国と地域の人が暮らしている。最も多いのはベトナム出身者で15%。次いで中国が14%、アメリカとネパールが12%と続く。うち20代~30代の若い世代が60%以上に上る。働き盛りで、子どもがいる、もしくはこれから子どもを持つような人たちだ。

 彼らは支援しないといけないところもあるが、たくさんの力があり、共に暮らす人でもある。「支援」という意識ではなく、「共に暮らす人」として人権に配慮しながら、彼らが最大限活躍できる場を作っていくことで、より暮らしやすい社会が作れるのではないか。

 沖縄独自の関わりを模索することが大事だ。「沖縄移民」の歴史から、異国の地で助け合うゆいまーるの輪や、国際間ネットワークなどを学ぶことができる。また「いちゃりばちょーでー(出会えば皆兄弟)」もキーワードになる。

 そこから外国人に対して(1)「支援」の視点から「共生、共に暮らす人」へ(2)外国人の持つ力を私たちに提供する機会を持つ(3)外国人自身のコミュニティーを大事に見守る(時に支援)(4)外国人の文化だけでなく、自国の家族や国を愛する気持ちを尊重する―などを学ぶことが、沖縄独自の多文化共生のヒントになると思う。