県が本年度中の制定を目指し、開会中の県議会2月定例会で審議されている「県農作物の種苗の生産に関する条例」を巡り、登録品種の「自家増殖」は許諾手続きが不要だと条項に明記するよう、市民団体が声を上げている。県は、県開発の登録品種と出願中の品種については自家増殖の許諾手続きは不要だと告知しているが、条例案には明記していないことから、関係者は「多くの農家が先行きを不安視している」と指摘する。
農家が生産物から取った種を次の栽培に生かす「自家増殖」について、2022年4月の改正種苗法の施行に伴い、登録品種については開発した育成者の許諾が必要となった。
違反した場合は10年以下の懲役や1千万円以下の罰金が科されるなど厳しい罰則があり、各農家への徹底周知が喫緊の課題となっている。
一方、県は種苗条例の制定に先駆けて昨年10月からホームページ上で、県が開発した登録品種と出願中の品種については一部を除き、利用条件を順守すれば自家増殖の許諾手続きは不要だと告知している。
県は条例制定後も許諾手続きは原則不要とする方針だが、条例案の条項にはその内容を保証する明確な記載はない。
元農林水産相で日本の種を守る会顧問の山田正彦氏がこのほど来県し、沖縄ではサトウキビの90%は登録品種の自家栽培を続けている現状などを報告。「(ホームページでの)紙切れ一枚の告知は法改正に伴う激変緩和措置の一つであり、いつ許諾手続きが必要に変更となってもおかしくない」と指摘した。
沖縄の食と農を守る連絡協議会共同代表の桜井国俊沖縄大名誉教授は、条例の中で「許諾手続きは不要」だと記載することで明確に担保され、農家も安心して栽培が継続できると指摘する。「年度内の制定にこだわらず、じっくり議論した上で全国初の素晴らしい条例にしてほしい」と求めた。
(当銘千絵)