男性の運動靴、女性のハイヒール…谷口真由美さんが説く「結果の平等」とは 国際女性デー


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ジェンダー平等とSDGsについて講演する谷口真由美さん=5日、那覇市の琉球新報社

 国際女性デーを前に琉球新報社は5日、法学者の谷口真由美さんを招きジェンダー平等とSDGs(持続可能な開発目標)を学ぶ勉強会を開いた。OKINAWA SDGsプロジェクト(OSP、事務局・琉球新報社、うむさんラボ)の関連イベントでOSPパートナー企業や市民団体から約20人が参加した。

 政府は2020年までに指導的地位にある女性を30%以上にする目標「202030」を立てたが先送りした。谷口さんは「30%なんてめちゃくちゃ控えめ」とした上で、実現できない背景として受験資格など「機会の平等」はあっても「結果の平等」を保障する基盤がないことを挙げた。

 男性はゴルフや飲み会で、求められるリーダー像や昇進試験の肝を聞ける一方、女性はその場におらず情報も得られないとして「男性はジャージーに運動靴、女性はハイヒールにタイトスカートで競走するようなもの。スタートラインは同じでも平等ではない」と説明した。

 SDGsではジェンダー平等が求められるが「女性の地位向上ではなくLGBTQの問題に取って代わられるところがある」と指摘。性的少数者の平等を重視した上で「LGBTQの中でも経済的に恵まれているのはゲイカップル。性別による格差はあらゆるマイノリティーの中に重層的にある」とした。

 会場からも「男女平等を求めて活動してきたが、性の多様性や『男性への配慮』に引っ張られて女性の問題が後回しになっている印象がある」との発言があった。谷口さんは「男女平等は一度も実現しておらず、女性は人数も配分される資源も圧倒的に少ない。その非対称の中で多数派である男性が配慮を求めるのは早すぎる」と答えた。

谷口真由美さんに質問する参加者

 企業や自治体からは「女性が昇進したがらない」との相談があるという。「なぜ昇進したがらないのか、働き方や家族の背景を聞くと『そら無理やな』となる」。日本の男性の、自殺率の高さにも触れて「ジェンダー平等を進めるとしんどい男性も減る。男女とも生きづらい状況を変える簡単な方法がジェンダー平等だ」とした。

 会場との質疑も盛り上がった。「最近の若い女性は優秀な人が多い」との声に「以前から女性は真面目で優秀な人が多かった。就職活動でも上位は女性と言われながら実際の採用は逆転する」と現状を指摘。「女性にガラスの天井があるのではなく、男性が見えないげたをはかせてもらっていると認識して」とした。

 「女性職員が多いが役員や管理職はゼロ。増やすのに苦労している」という企業からの参加者に「若い世代にも男性優先の考え方がある。環境が整わなければ若い人もやりようがなく、環境整備には(女性の)役員などが不可欠」と権限を持つ人が変わる重要性を改めて指摘。女性のロールモデルについて「スーパーウーマンがモデルだと後が続かない。成功談より失敗談や大変さを持ち寄り、問題をどう解決したか、夫の『おっさん化』をどう防ぐか、情報共有する方がいい」と勧めた。

 「数字に表れない『幸福度』を重視したい」との会場からの発言に、谷口さんは「貧困率や『2030』などの数値目標を達成できなくても幸せだからいいとはならない。客観的指標と主観が連動していなければ、大きな問題を見逃してしまう可能性がある」。別の参加者は「自分たちの社会の障壁に気付かず『大変な途上国よりは幸せ』と考えてしまうこともある」と話し、主観を慎重に扱う必要性を指摘した。
 (黒田華)