沖縄戦の継承危惧 全社「軍命」明記なし 「集団自決」山川、軍関与も触れず


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 文部科学省の検定を通った高校教科書「日本史探究」の7冊全てに「集団自決」(強制集団死)の記述があった。だが「軍命」を明記した教科書はなかった。日本軍による強制性に触れたのは実教出版の2冊だけで、山川出版社は日本軍の関与にすら触れなかった。

 2冊が検定を通った山川は、そのうちの1冊で「『集団自決』に追い込まれた人々も含めおびただしい数の犠牲者を出し…」と記した。もう1冊では「日米両軍に多大な犠牲を出しただけでなく、『集団自決』に追い込まれた人々も含め、多数の島民が犠牲になった」と記述。どちらも日本軍の関与に触れていない。

 高嶋伸欣琉球大名誉教授(社会教育学)は、「住民が勝手にそのようにした、あるいはアメリカ軍に追い詰められたためとも読める」と指摘した。山川は21年3月末に合格した高校「歴史総合」で、「事実上日本軍に強要された住民の集団自決もおきた」と日本軍の強制性に触れている。今回の「日本史探究」で日本軍の強制性を弱めたことについて、同社から29日までに回答はなかった。

 実教出版は検定を通った2冊のうち1冊で、「日本軍により、戦闘の妨げになるなどの理由で県民が集団自決を強いられ、スパイ容疑で殺害される事件や幼児が殺される事件が多発した」と記し、注釈で「『軍とともに戦い軍とともに死ぬ』(「共生共死」)することを強制された」と説明を補強した。もう1冊でも注釈を設け「現在では『強制集団死』ともよばれている」と記載した。「強制集団死」と記したのは検定を合格した7冊のうち、この1冊だけだった。 (嘉数陽、名嘉一心)

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