【記者解説】なぜ教科書から「10・10空襲」が消えた? 意義揺らぐ検定…沖縄史の体系的学び必要


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沖縄への空襲に関する日本からの抗議に対して、対応を検討する内容の米公文書(県公文書館提供)

 文部科学省は教科書検定の必要性について「適正な教育内容の維持」をその一つに挙げている。那覇市歴史博物館によると10・10空襲では民間人225人を含む死傷者を出し、当時の日本政府が無差別攻撃だと米政府に抗議した記録がある。しかし東京大空襲を「最初の無差別攻撃」と記述した書物があることを理由に「間違いとは言い切れない」とする文科省の説明は整合性がとれていない。

 文科省は、教科書の記述は「あくまで民間で編集された図書」だとして「国の方針として確定させる意図はない」と説明した。一方で「日本軍慰安婦」の記述は「政府の統一的な見解に基づいた記述がされていない」として、「慰安婦」「慰安婦とされた女性」などと修正させた。10・10空襲について修正させないのは恣意(しい)的で、検定そのものの意義が問われかねない。

 事実と異なる教科書の記述も問題だが、独自の歴史を刻んできた琉球・沖縄史を体系的に学べるカリキュラムが県内でもないことが以前から指摘されていた。

 県教育委員会は復帰50年の22年度、沖縄戦から日本復帰までを学ぶ特設授業を各県立学校で生徒対象に実施することを目指している。県教委も歴史教育の在り方や、教師が学べる環境の確保について見直しを始めつつある。検定の意義を含め、正確な歴史が継承できる仕組みづくりが求められる。
 (嘉数陽)