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ユイマール精神で横浜鶴見で外国人を支援 ABCジャパン理事長・安富祖美智江さん<県人ネットワーク>


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安富祖美智江さん

 区民の22人に1人が外国人という多文化都市の横浜市鶴見区。同区は大正末期から県人が移り住み、沖縄文化も根付く地域として知られる。その鶴見で、外国人の生活を支援する活動に奔走する。2000年に、同区在住の日系ブラジル人らともにABCジャパンを設立、06年にNPO法人化した。

 ブラジル・サンパウロで生まれた。恩納村出身の父、秀吉さんは1959年に、母トヨさんは61年にブラジルに渡った。21歳のときに日本に。群馬県の工場で2年ほど働き、兄がいる鶴見に移った。「ブラジルコミュニティーの中で楽しかったが、日本語能力が伸びなかった。これではだめだと思った」と振り返る。

 鶴見では電話やインターネットサービスなどを行うKDDIの代理店業務を、主に日系ブラジル人向けに行った。そのうち、客から相談や悩みを打ち明けられるようになった。「宅急便の再配達の手続きをするのも困っている人がいた」と語る。

 自身も日本で言葉の壁にぶち当たった。ウチナーグチは分かるが、日本語が分からない。子どもの学校からのお知らせも理解できず、対応できないことが何度もあったという。

 支援団体には就職活動や、けが、いじめなどさまざまな相談が寄せられる。特に日本の教育システムが分からないとの声があった。09年ごろからは教育関係の支援を本格化させた。入学で準備するものなど、小中高と学校別のマニュアルを作成。ポルトガル語、スペイン語、英語、中国語、タガログ語の5カ国語を用意する。進学率が低い外国人の子どもたちのための高校進学支援やフリースクールなど支援は多岐にわたる。

 近年は心のサポートを強化する。コロナ禍もあり、悩みや不安を抱える人が増えていることからカウンセリングに力を入れる。

 「幼いときから、県人会や頼母子(たのもし)(模合)などを通して困っている人を助けるのを見て育った。『困っている人がいれば助ける』という今の活動につながっている」。先人から受け継いだユイマールの精神が深く根付いている。(問山栄恵)


 あふそ・みちえ 1968年、ブラジル・サンパウロ生まれ。21歳で来日。2000年に外国人の生活を支援する団体「ABCジャパン」を設立。06年にNPO法人化し、現在は理事長。