〈101〉小児・若年がんと妊娠 生殖医療に経済支援も


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社

 近年がん治療の向上により、一部のがん患者さんはがんを克服できる時代になってきました。一方で、がんに対して行う抗がん剤治療や放射線治療は、卵巣や精巣の働きを低下させ、早発卵巣機能不全、無精子症となり、妊娠する可能性が消失することが問題となっています。

 若いがん患者さんの中には、がんを克服しても、将来妊娠できないことで恋愛や結婚に消極的になり、苦悩しながら人生を歩む方もいます。

 がん生殖医療とは、がん治療を受ける前に、将来妊娠する可能性を残す方法、妊孕(にんよう)性温存療法について考え、必要性が高いと判断した場合は治療を行う医療です。

 妊孕性温存療法には、男性であれば精子凍結、女性であれば卵子・受精卵凍結があります。また初経が来ていない女児に対しては、臨床研究としての位置付けではありますが、卵巣組織凍結も開始しています。

 がん生殖医療では、がん治療を行うことが何よりも優先であり、妊孕性温存療法ががん治療の妨げになってはいけないと考えます。

 そのため、がんの進行の程度やがん治療開始までの時間的猶予、患者さんの全身状態によっては、妊孕性温存をあきらめざるを得ない場合もあります。治療にかかる時間は、精子凍結であれば1日、卵子・受精卵凍結であれば2~3週間、卵巣凍結であれば4~5日を要します。

 沖縄県は多くの離島を有する県ですが、がん治療後の妊娠の可能性に関して、誰もが適切な時期に適切な情報を知り相談できるよう、地域のがん拠点病院と連携し、がん生殖医療を実施しています。

 これまで妊孕性温存療法にかかる費用は全額自費でがん患者さんに大きな負担となっていましたが、2021年4月より国からの経済的支援が開始されました。

 がん生殖医療が、これからがん治療を受ける患者さんの希望となるよう、がん治療医と生殖医療医の密な連携、多職種を含めたサポート体制の構築に努めています。特に若いがん患者さんとその家族には、がん生殖医療があることを知っていただきたいと思います。

(赤嶺こずえ、琉球大学病院 産婦人科)