「鉄軌道を政府が検討」沖縄振興方針に明記 「自主性尊重」の文言は削除


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内閣府

 政府が策定し、今後10年間の沖縄振興の方向性を位置付ける「沖縄振興基本方針」案の全容が6日までに明らかとなった。社会資本の整備に向けて「全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度を含め、調査・検討を行う」との文言が初めて盛り込まれ、鉄軌道を含め、新たな公共交通の在り方を検討していく方針を打ち出した。これまでの基本方針に明記されていた「沖縄の自主性を最大限に尊重」との文言は新たな方針案では削除された。内閣府は今月中旬にオンラインで沖縄振興審議会を開き、方針案について議論する。 

 沖縄県は、全国新幹線鉄道整備法を参考とした特例制度の創設によって、レールなど運行に必要な施設の建設や保有は、国や県などが担い、運行会社が車両を運行する「上下分離方式」による鉄軌道導入を求めていた。基本方針案に盛り込まれたことで、鉄軌道の導入に向けた検討が前進する見通しとなった。

 方針案は、米軍施設が集中していることに関して「わが国と東アジア地域の安定に寄与する」と、安全保障面での必要性に触れつつも、「土地利用やまちづくり等の大きな制約となって県民生活にさまざまな影響を及ぼしている」と記述し、基地負担軽減を進める必要性に触れた。政府が推進する米軍普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古新基地建設について、明確な記述はなかった。

 序文では、沖縄がアジア・太平洋地域と近い優位性に触れ、「海洋資源の利用や領海、排他的経済水域等の保全など、広大な海域に点在する多数の離島が担う重要な役割も認識されている」と沖縄の発展可能性を明記した。一方、全国最下位の1人当たり県民所得や子どもの貧困などの課題が顕在化していることも挙げた。

 沖縄振興基本方針は、県が沖縄振興計画を策定する際に指針と位置付けられる。沖縄振興審議会の議論を経て、岸田文雄首相が5月中旬に基本方針を決定する。基本方針を踏まえ、県は新たな沖縄振興計画を正式決定する流れとなる。関係者によると、内閣府は審議会委員に対して方針案への意見を照会しており、最終的には文言が修正される可能性もある。 (池田哲平)