6日に明らかになった国の沖縄振興基本方針案には普天間飛行場に関する記述は盛り込まれず、基地問題に関しては「沖縄に集中する基地負担の軽減を進めていく」との文言にとどまった。一方、県が1日に公表した第6次沖縄振興計画「新・沖縄21世紀ビジョン基本計画」最終案には米軍普天間飛行場の「県外・国外移設」との文言が初めて明記された。政府の基本方針に基づき、県の振興計画は策定されるが、双方の記述の違いは鮮明になり、今後の動向が注視される。
政府は普天間飛行場の移設に伴う名護市辺野古への新基地建設は「基地負担軽減策の一環」と位置づけているが、直接的な表現は避けていた。自民党国会議員からは双方の記述の違いが際立っているとして「基地問題にあそこまで踏み込んだのは、正直驚いた」と戸惑いの声が上がる。
新たな振計は首相が5月中旬に決定する沖縄振興基本方針に基づいて策定される。普天間飛行場に関する振計の最終案が、基本方針の書きぶりにも影響するといった見方も出ている。
■防衛政策を明確化
県は振計最終案で「普天間飛行場については、改めて県外・国外移設を追求し、同飛行場の速やかな運用停止および固定化を避ける方策を検討する必要がある」とした。
これに対し、自民議員の間では驚きの声が上がる。今後の振興策の円滑な展開などを見据え、県は政府との衝突を避けるとの見方があったからだ。
ただ、県がより立場を鮮明にしたことで、「政府としても辺野古移設推進の方針をより打ち出しやすくなった」(自民国会議員)と捉える向きもある。
ロシアによるウクライナ侵攻で、台湾有事への警戒感が強まっていることもあり、「沖縄の防衛政策上の役割をより明確にする環境は整いつつある」(同)との見方も出ている。
■国は問題視せず
県は普天間飛行場に関する同様の文言を昨年6月に公表した振計素案でも明記し、公表している。
企画部担当者によると、これまで内閣府とも振計の文言について情報共有してきたが、意見はなかったという。改正沖縄振興特別措置法第3条2項では基本方針に定めることができる事項を規定する。
米軍基地関係では原則「跡地利用」に関する記述だけができることになっており、国の「辺野古推進」姿勢を基本方針に盛り込むのは困難とみられる。
玉城デニー知事は1日、普天間飛行場を含む「嘉手納以南」の基地返還を日米で合意したSACO合意が実現しても沖縄に基地が集中する度合いは変わらないと説明。「この現実をしっかり捉えてさらなる基地の整理縮小により、沖縄を平和の緩衝地帯にする方向性を政府に求めていきたい」と述べた。
(梅田正覚、安里洋輔)