旧コザ市地区の活性化どうする?都市計画で違い鮮明<WEB限定・発言詳報 沖縄市長選立候補予定者座談会(上)>


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沖縄市長選へ立候補を表明している桑江朝千夫氏(左)と新人で前市議の森山政和氏

 17日告示、24日投開票の沖縄市長選の立候補予定者を招いた8日の座談会では、現職の桑江朝千夫氏(66)=自民、公明推薦=と前市議で新人の森山政和氏(73)=共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし推薦=が、市民の暮らし向上やまちづくりなどで自らの政策を訴えた。米軍牧港補給地区倉庫群の米軍嘉手納弾薬庫知花地区への移設計画については立場の相違が浮き彫りとなった。クロス討論では事業予算の根拠や公約の進展状況について質問をぶつけ合い、白熱した議論が交わされた。議論での発言詳報を上・下に分けて公開する。(文中敬称略)


ターミナル整備計画について

■司会Q(島袋良太・中部報道グループ長) 今回の市長選では、両候補者とも交通ターミナル整備を公約に掲げているが、整備する地域などの内容に違いがある。自身の計画の背景と狙いを聞かせてほしい。

桑江氏「交通結節点で要所に」
森山氏「市活性化の起爆剤に」

 

 桑江氏 私の「バスタ構想(ターミナル整備計画)」には要因が3つある。それは国道330号の国道拡幅が既に始まっている。胡屋北交差点改良工事と国の直轄事業だ。そこに付随してくる商店街の在り方に関しては、もう5,6年拡張残地の有効活用について商店街連合会の方々と度重なる意見交換を行い、そこがバスタという構想で意見が一致している。

桑江朝千夫(くわえ・さちお) 1956年1月生まれ。沖縄市住吉出身。日本大卒。市議3期、県議2期を経て、2014年4月の市長選で初当選した。現在2期目。

 そして基幹バスシステム推進に向けた沖縄市側での交通地点での位置付けだ。基幹バスシステムについては、那覇市圏域と沖縄市圏域を結ぶための交通結節機能が沖縄市において位置付けられた。その整備を進めていかなければならない。

 そして法の改正により、道路管理者によるバスターミナル機能の整備が可能となったという、この3点が要因だ。

 特に商店街連合と度重なる意見交換をした。そこで、官、民、国も一体となってこの「バスタプロジェクト」を進めることにした。国では2022年度、この国道拡幅に関する物件補償等8億円の予算が付いている。その他、バスタの調査費も予算化している。なので、国において進められ、われわれは商店街の方々とさらに話し合い、有効的に構想を現実的なものとして進めていくことになる。

 路線バスを利用して、空港からの利用がしやすくなる。そして沖縄市内の循環バスもここを起点とし、4方面に運行していく。沖縄アリーナからのシャトルバス、ライカムからのシャトルバス、こどもの国からのシャトルバス、当然、タクシーの乗り降りもここで。つまり交通の結節点、要所となる。これからのまちづくりが、この中心市街地が再活性化するという位置付けだ。
 

 森山氏 コザ十字路へのターミナル整備を目指す。コザ十字路は、戦後、生活と経済の中心であり拠点でもあった。現在は、国道329号と330号の結節点であり、今なお、本島中部の代表的なアジマー(交差点)でもある。この場所にターミナル整備をすることにより、沖縄市の市街地活性化の起爆剤とする。ターミナル整備により、基幹バスやコミュニティーバスは、コザ十字路が乗り換え地点となり、東部地域や北部地域へのアクセス向上が見込める。
 

森山政和(もりやま・まさかず) 1948年12月生まれ。宜野座村出身。武蔵野音大卒。沖縄市立越来中校長などを経て2010年から市議3期。出馬に伴い辞職。

 将来的には次世代型路面電車(LRT)構想も検討し、沖縄市だけにとどまらず、中部圏全域の拠点として、周辺市町村への経済波及効果も期待できる。現在、国道 330号は、胡屋十字路からコザ十字路までの拡幅工事が計画されている。国道の拡幅工事と連動したまちづくりを進めることで、ターミナル周辺にとどまらず、胡屋地域も含めた中心市街地全体の活性化を推進していく。コザ十字路に人が集まり、人が交流することにより、まちのにぎわいを取り戻す。

 また、ターミナル整備にともない、コザ十字路には市役所の支所を開設する。一部の窓口相談業務を行うことにより、行政サービスの地域格差の解消を図る。 銀天街や吉原地域については、ターミナル整備とともに「小さな再開発」をおこなうことで、安全・安心なまちづくりを進める。また「越来グスク」を整備し、市民や観光客を取り込む。周辺地域へ良い影響を及ぼし、快適な地域にすることを目指す。


旧コザ市の人口減と高齢化

■Q 旧コザ市地区で人口減少と高齢化が進んでいる。昨年には市山里に沖縄アリーナが完成し、また市東部では東部海浜開発事業、市南部ではキャンプ瑞慶覧ロウワー・プラザ住宅地区の跡地利用が控える中、中心市街地の活性化と定住人口の拡大に向けては、どのような施策を展開していくか。
 

森山氏「中小優先し経済回す」
桑江氏「開発で都市機能向上」

 森山氏 旧コザ地区の活性化は長年の課題だ。実に難しい問題と認識している。抜本的な解決策として「小さな再開発」を推進する。

 嘉手納基地とともに形成された中心市街地は十分な都市計画がないまま各地から人が集まり街がつくられた。復帰後、沖縄市はインフラ整備が進み発展を遂げたが、大型事業の陰で取り残された地域が多くある。国道から一つ奥に入ると、住宅が密集し、道路が狭く、消防車など緊急車両が通れない地域がいまも整備されずに放置されている。

 少子高齢化が進む中で住環境の改善は一層困難になり、人口は加速的に減っていく。市内の住宅は5万4千戸あり、その中で空き家は1割にも及ぶ。街がスポンジのように穴だらけになっていく「都市のスポンジ化」問題にどう対応するかが今日的に大きな課題となっている。

 大きな開発事業よりも「小さな再開発」を市内各地で進め、まちづくりは、住みやすく再生することを優先すべきだ。他県の先進例を見れば、住宅地の中に憩いの場が生まれ、おしゃれなカフェができ、街は息吹を取り戻している。

 沖縄市に必要なのは「人に優しいまちづくり」だ。大きな開発は本土大手が利益を吸い上げるが、「小さな再開発」は地元の中小零細企業を優先して仕事を回すことができる。人が集まり、地域が潤うことで市民所得を向上させていく。大規模開発から「小さな再開発」へと変更することが、復帰50年を迎える沖縄にとって最も必要な発想の転換だと考える。
 

 桑江氏 中心市街地の活性化については、昨年完成した沖縄アリーナが力を十分に発揮してくれると確信している。そして商店街と連携して、沖縄アリーナに誘客した方々を中心市街地、われわれの手元に呼び込む。すでに経済効果が現れている。

 3年前に中の町にホテルコザができた。昨年11月には上地の方にミュージックホテルコザ、そして12月にはグランアリーナというホテルが建った。来年には、沖縄南インター出口にある旧サッカー場跡に大型ホテルが完成する。もう既に経済効果は表れ、今後ホテルに滞在する人を中心に市街地に呼び込み、商店街と連携して取り組む。

 先ほど申したバスタ構想、国道拡幅により中心市街の真ん中、一番街辺りががらっと変わる。シャッター街と言われた通りを一新していく。

 一番街でも8年間で244件の新規出店やリフォームが実施され、311件の創業支援に取り組んできた。これはスタートアップ企業が進出しやすい環境を作ったからだ。私がスタートアップカフェ、創業支援、今は「スタートアップラボ・ラグーン」と言うが、そこの活躍は目を見張るものがある。そこで商店街でワーケーションを行うなど、若者らしい現象も表れている。

 そして定住化は、中心市街地の定住人口拡大に向けては、中の町や安慶田地区の区画整理による都市機能向上を促している。安慶田地区については着手して5、6年になる。道路の拡幅なども進んでおり、目に見える形で整備が進んでいる。このように都市機能の向上、老朽化した住宅建て替えを進める。


倉庫群移設と日米地位協定

■Q 米軍牧港補給地区倉庫群の嘉手納弾薬庫知花地区への移設計画への対応は。また基地問題では両候補者とも日米地位協定の改定を掲げている。基地所在自治体として感じる地位協定の具体的な問題点や、改定に向けて最も求めていきたい内容は。

桑江氏「通報体制の改善要求」
森山氏「住民への影響許さない」

 桑江氏 牧港補給地区倉庫群の嘉手納弾薬庫知花地区への移設については、移設による地域への影響を考慮し、特に地域住民の生活に密着した問題として、治水、交通問題、環境への影響等について、移設協議会等を活用し、国や県などの関係機関と緊密に連携を図りながら、諸課題の解決に取り組んでいるところだ。

 また、地位協定に関してだが、まずは米軍絡みの事件事故における通報体制について改善を求めている。それから環境汚染が懸念される場合の調査において積極的に協力してもらう。今後、倉庫群等が移設された後は、その施設排水などの調査が必要になった場合、現行の環境補足協定では地域住民への説明は不十分だ。そこの改定が必要だ。

 それとキャンプ瑞慶覧ロウワー・プラザ住宅地区への返還前の立ち入り期間の前倒しについても米軍に改善をしてもらいたい。これは現在も要請をしている。

 3つ目は米軍のローテーションにおける、コロナ対策だ。沖縄県に来る日本人と同様に、基地内の移動も日本の体制をしっかりと踏襲してもらいたい。ここはしっかりと要求している。

 以上が基地と地位協定だが、このコロナは特に米軍由来といわれているところをしっかりと反省してもらい、われわれの生活、経済に影響のないように、そして風評被害の起こらないように米側は対処すべきだ。

 森山氏 牧港補給地区倉庫群の嘉手納弾薬庫知花地区への移設は、6年前に桑江市長が「断腸の思い」で受け入れたと理解している。私は市議時代から基本的に反対の立場だ。この地域は農地として返還されるべき土地であったと、今でも私は考えている。基地強化につながる施設は認められない。地域住民への生活に影響が及ぶようなことは断じて許されず、今後の推移を注意深く見守る必要がある。

 日米地位協定は、日本の国内法が適用されない「治外法権」の状態を生じさせている。沖縄県企業局が取水している河川や地下水が有機フッ素化合物、PFASで汚染され、米軍基地が汚染源である蓋然性が高いにもかかわらず、県が求める立入調査すら拒否されている。

 ドイツでも同じ米軍基地のPFAS汚染問題があり、米軍は独自予算で浄化に取り組んでいる。この違いはなんなのか。

 ドイツは米軍基地に自国の国内法を適用している。しかし日本は基地・施設の管理権を米軍に委譲し、国内法が基地内に適用されない状態が、戦後77年を経た今も変わらない。

 日米地位協定を改定し基地の「管理権」を日本が取り戻す必要がある。現状では権利義務の法的規定がなく、基地を自由使用できる権利を米側が享受し、その結果生じる騒音問題などに対処する義務は誰も負わない。ドイツやイタリアのように自国の法律を基地内にも適用し、補足協定や基地使用協定を締結するなどし、責任の所在を明確にする必要がある。住民生活に影響が及ばないよう、法的拘束力のある取り決めを交わすべきだ。


<出席者>

桑江朝千夫氏(66)=現職、自民、公明推薦

森山政和氏(73)=新人・前市議、共産、立民、社民、社大、にぬふぁぶし推薦

 司会 島袋良太(琉球新報・中部報道グループ長)

<(下)市民所得の向上策やコロナ禍対策で議論白熱>に続く