侮辱罪の厳罰化 モバイルプリンスの知っとくto得トーク[254]


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政府は先月8日、「侮辱罪」【※1】の罪の重さを引き上げる改正案を決定しました。今の国会での成立を目指しています。

2020年、SNSの誹謗中傷でプロレスラー木村花さんが自ら命を絶つ悲しい事件が起きました。母親の木村響子さんは、花さんを誹謗中傷していた中から2人の男性を特定し侮辱罪で訴えましたが、結果は科料(※罰金より軽い)9千円でした。

それだけ侮辱罪の扱いが軽く、その結果、今回の法改正の流れになっています。

 

※1 侮辱罪 … 「侮辱」とは相手を見下し、恥ずかしい思いをさせる言動のことです。公の場所で事実を指摘せずに相手を侮辱すると「侮辱罪」になりますが、改正されることで「1年以下の懲役・禁錮、または30万円以下の罰金」となります。(なお、具体的な事実を指摘した上で相手の名誉を傷つけると侮辱罪ではなく「名誉毀損罪」の対象となります)

 

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侮辱や名誉毀損の抑止のために罪を重くすることに賛成する人は多いと思いますが、それを逆手に取って、政治家や力のある人たちが自分たちへの「批判」を「侮辱罪」として訴える可能性があることには注意が必要です。

他人を脅迫して萎縮させるためにお金や権力を利用して裁判を起こすことを「スラップ訴訟」と呼びますが、法改正によってスラップ訴訟が簡単に行えるようになるかもしれません。

そうなると、今度は私たちの言論の自由が奪われます。非常に難しいバランスの法律です。

 

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同じ言葉でも、相手との関係性や前後の文脈によって意味や受け止め方は大きく変化します。自分に悪気がなかったとしても、相手を傷つけたり侮辱になったりする可能性があります。

また、SNSやLINEなどの「文字でのやり取り」は言葉が足りなかったり、入力間違いをしたりして、違う意味で伝わるリスクもあります。投稿・送信前に言葉の使い方に問題がないか、念を押して確認してみましょう。

 

イラスト・小谷茶(コタニティー)

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【プロフィル】

 モバイルプリンス / 島袋コウ スマートフォンアドバイザー、フリーライター。沖縄県サイバー防犯PR大使を務め、スマホやインターネットの活動講座を学校などで実施。本連載をまとめた著書「しくじりから学ぶ13歳からのスマホルール」(旬報社)も発売中。

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