命から学ぶということ 周本記世(がじゅまる動物クリニック院長)<未来へいっぽにほ>


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周本 記世(がじゅまる動物クリニック院長)

 子どもの頃、学校の飼育小屋でウサギやニワトリの世話をした人は多いのではないか。幼稚園や小中学校で飼育されている「学校飼育動物」について、県獣医師会学校飼育対策動物委員として全7回にわたり紹介していきたい。

 さて、小学生のスマートフォン普及率が50%を超え、AIやVRが発達した現在、学校飼育動物の存在意義とは何か。動物を世話することで、何を食べてどんな便をするのか、匂いや音、息づかい、触り心地、愛らしさや面白さ、怖さ、命の誕生と死、病気になり治療をして元気を取り戻す過程など、たくさんの貴重な体験ができる。

 この体験から、命の尊さや責任感、他者への思いやりを学ぶことができる。またこの命からの学びが、世界が人間だけのものではなく、多くの尊い生命と共存しているという意識、地球環境悪化への懸念、SDGsへの取り組みなどへ発展するのではないだろうか。

 だからこそ、子どもたちが貴重な命からより多くを学べるよう、学校には適正な飼育体制を整えてもらいたい。その助言やお手伝いをするのが、学校飼育動物に関わる獣医師の役割だと考えている。

 先日、ある幼稚園のウサギが耳の病気になり、当院を受診した。感染と強い炎症があったが、通院と投薬治療を行い、元気に園へ戻っていった。病気になった時にどうすればいいのか、どうしたら再発予防ができるのか、こうしたことを積極的かつ丁寧に子どもたちと共有していくことが、動物たちと子どもたちの明るい未来につながると信じている。