日本の家庭裁判所の手続きを経た上でも養育費を支払わない米軍関係者から強制徴収する突破口が開いた。日米地位協定という厚い岩盤に風穴を開けたのは、米軍関係者ならば誰でも持つ私書箱に目をつけたたゆまぬ熱意と知恵だった。
「ウーマンズプライド」のスミス美咲代表は主に沖縄の女性と米軍関係者との間で起きる国際家事相談支援で16年の活動歴がある。2020年、米兵との子を持つ別の女性からの相談を受け、行方知れずだった父親が米ハワイ州にいることを突き止め、沖縄から同システムを利用して養育費を強制徴収した経験を持つ。
スミス代表はこの経験から、米軍関係者ならば誰でも設けている基地内の私書箱に目をつけた。住所を調べたところ、カリフォルニア州であることが判明。元夫が米本国に住所を有し、この制度が適用できると認定する可能性があるとみて州の裁判所に申請した。
この粘り強く、諦めない取り組みが女性の権利救済につながった。女性は家庭裁判所の司法手続きやスミス代表の支援を受け、3年近くの歳月を経てようやく養育費を受け取った。
女性は「途中で駄目かと思ったこともあったけど、スミスさんの協力で養育費を得られた。同じ境遇の人は子どものことを考えて、最後まで諦めないでほしい」と語った。
(梅田正覚)