小さく生まれた赤ちゃんの成長を記録 沖縄県版ハンドブック作成へ 当事者ら「親の不安に寄り添って」


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沖縄版のリトルベビーハンドブック作成に向け「当事者に寄り添う本にしてほしい」と話した石上朱美さん(右から2人目)と次女の星七ちゃんを抱く大島友子さん(同4人目)。石上さんの長男青さん(同3人目)と次男の晴さん(右端)、大島さんの長女(左端)=4月6日、名護市内

 県は早産などで小さく生まれた赤ちゃんを持つ親の不安や悩みに答えるため、小さな赤ちゃん特有の成長過程を記録できる「リトルベビーハンドブック」の作成に本年度から着手する。現在は検討委員会の設置に向けて動き出している。

 同ハンドブックは2018年に静岡県で初めて導入された。沖縄版の作成のため、2500グラム以下の低出生体重児として生まれた子どもとその親が集う「やんばるちびっこの会」のメンバーらが、県や県議会に働き掛けてきた。同会の石上朱美(あけみ)さん(38)=名護市=は「親は小さな赤ちゃんがどんなふうに育っていくのか不安がある。だが周囲に同じような経験をした人がいないことも多く、不安や悩みを抱えがちだ。そうした当事者に寄り添うような本になってほしい」と期待感を示す。

 現在配布されている親子健康手帳(旧母子手帳)は生後1カ月や3カ月、6カ月、1歳などの区切りで「首がすわったか」「お座りができるか」などの質問項目がある。親はそれらに「はい」「いいえ」で答え、記録していく。

早産などで小さく生まれた赤ちゃんの記録をつけられる「リトルベビーハンドブック」の例(愛知県ホームページより)

 だが低体重で生まれた子どもは生後3カ月を過ぎても保育器に入っていたり人工呼吸器をつけていたりするなど、手帳と成長のスピードが合わないことが多い。妊娠24週2日で690グラムだった次男の晴さん(8)を出産した石上さんは「母子手帳のどの項目にも『はい』と答えられなくて、母子手帳に責められているような気分になった」と振り返る。

 こうした当事者の声を受けて、県外で作られているハンドブックでは「できる・できない」ではなく、「いつできたか」を記録する。保育器を出た日、経管栄養のチューブが外れた日、初めてチューブやテープなどがついていない赤ちゃんの顔を見られた日など、一つ一つの成長の記録を書き込める。また早産を経験した「先輩ママ」や大人になった「元リトルベビー」からのメッセージなども盛り込まれている。

 妊娠22週2日で420グラムだった次女星七ちゃん(1)を出産した大島友子さん(45)=那覇市=は「通常の母子手帳は予防接種のページくらいしか使ってない」と笑う。「ハンドブックがあることで『自分の子どもは特別じゃない。前例がある。ちゃんと成長できる』と思えるだけでも親は安心できると思う」と語った。石上さんは「ハンドブックを作り、必要としているお母さんたちに取りこぼしのないよう渡せる仕組みの構築も必要だ。今後当事者としていいものができるよう関わっていきたい」と話した。
 (嶋岡すみれ)