【深堀り】政府は是正指示で対抗か 辺野古承認勧告、沖縄県が判断見送り


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名護市辺野古の米軍キャンプ・シュワブ沿岸部=3月17日、航空機より撮影

 米軍普天間飛行場移設に伴う名護市辺野古新基地建設の設計変更申請を巡り、沖縄防衛局が進めようとする軟弱地盤改良工事には県の承認が不可欠で、国側は拘束力のある是正指示など対抗措置をとるとみられる。国が県の不承認を無効化して設計変更承認を得ても、工事着手から完成まで約12年かかる。政府は普天間飛行場の返還期日を「確定できない」と明言するなど、辺野古移設による同飛行場の閉鎖・返還も見通しが立たない状況が続く。

 ■続く法廷闘争

 県の対応を受け、国側は是正指示に踏み切り、県側が不服として国地方係争処理委員会に申し立て、その後に指示の違法性を訴えて訴訟に至る展開が想定される。司法判断で指示が是認された後も県が承認しない場合、国が代わりに承認の手続きに入る代執行を行うことも想定される。この過程も訴訟を経る。

 訴訟などで県の主張が認められた場合、防衛局は現行申請での地盤改良工事ができなくなる。基地建設でのサンゴ移植を巡る訴訟では、最高裁裁判官5人中2人が県を支持する反対意見を付けた。そのため、県庁内では訴訟に希望を見いだす向きもある。

 20日、参院議員会館で開かれた市民団体主催の辺野古新基地建設問題に関する学習会で、辺野古関連の訴訟に詳しい名古屋大学の紙野健二名誉教授(行政法)は「政治日程も見据えて政府は急いでいる。勧告の期限が過ぎればすぐに是正指示など、次から次へと弾を撃ってくるだろう」との見方も示した。

■決まらぬ返還期日

 承認勧告の期限となっていた20日、玉城デニー知事は東京都内を訪れていたが、基地問題に関わる防衛省には立ち寄らなかった。要請の主眼は沖縄振興で、訪問先でも不承認については触れなかったとみられる。他方、同日付で岸田文雄首相宛に文書を出し「県民投票で反対の民意が圧倒的多数で明確に示されている」と工事中断を訴えた。

 同日、自民党から支援を受ける松川正則宜野湾市長は、普天間飛行場の早期返還要請で防衛省と外務省を訪れた。「予定していた閣僚全員が日程を調整してくれた。誠意のある対応だ」と胸を張る。林芳正外相も「辺野古移設やむなしと公言している市長の思いを、非常に重く受け止めている」と強調してみせた。

 松川市長は林外相らとの面談で返還合意から26年を迎えた12日に玉城知事と会談して辺野古移設を容認する姿勢を改めて伝えたことも報告した。面談後の取材に「知事に選択肢もなく辺野古移設を容認せざるを得ないと伝えたが(知事は)ずっと反対と言っており、なかなか(議論が)かみ合わない」と語った。

 他方、今後不承認を巡って想定される訴訟で国側が勝利し、設計変更承認が得られたとしても、年単位の期間が必要になる。

 返還期日が定まらない中、政府が「辺野古移設が唯一の手段だ」(岸田氏)と言い続けるほど、普天間飛行場の危険性も放置され続けている。
 (塚崎昇平、明真南斗)