【識者談話】検討する時間を与えぬ国の関与は疑問 辺野古承認勧告(徳田博人・琉球大教授)


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徳田博人氏琉球大教授(行政法)

 地方自治法上考えられる今後の展開としては、国が県に承認するよう是正指示を出し、不服とする県が国地方係争処理委員会に申し立て、訴訟に至る、という経緯が順当だ。他方、工事を進めたい国は、かつて司法からも地方自治上の問題が指摘された経緯を無視し、即座に代執行の手続きに入ることもありうる。今後はさまざまな展開が想定され、現時点で確定的な見立てに言及するのは難しい。例えば、運転免許の交付には年齢や技能・学科試験の合格などが条件となるが、年齢を満たしていなければ、試験結果は検討せずに却下できる。後から「実は年齢を満たしていた」と言ったとしても、免許を交付するには他の条件の検討が必要になる。

 8日に国交相が県の不承認を取り消した裁決をした際、同時に県に承認を求める勧告を出した。運転免許の例と同様に、県が一度不承認とした設計変更申請を承認するには、不承認の根拠とした項目以外の審査項目も再検討し、条件を満たしているか確認しなくてはならない。

 勧告は一定の期間経過しても県が裁決に従わない場合に出すのが筋だ。県が裁決内容を検討する時間も与えずに、勧告で承認を求めるのは国の地方への関与としてはおかしい。そもそも、沖縄防衛局の設計変更の申請段階で、軟弱地盤そのものの調査不足が指摘されており、科学的に誠実でない対応がなされた。調査情報の公開が不十分である点も、指摘しておく必要がある。