「一生懸命、間違えている」 前田比呂也(中学美術教師・元中学長)<未来へいっぽにほ>


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前田比呂也(中学美術教師・元中学長)

 「一生懸命、間違えている」のかもしれない。子どもたちの未来を切り開くうえで、学力の向上が重要な要素であることは間違いない。しかし全国学力テストへの取り組みの過熱ぶりをみるたび、頭をよぎることがある。

 戦争の足音が近づく昭和10年代のこと、学校教育全体に軍国主義が入り込む。標準語励行運動とともに、「遠足」が「行軍」となり、軍人の指導で学校での軍事教練が行われた。その成果を争う全国中等学校国防競技大会というものがあり、障害通過競争で沖縄県立三中が、手榴(りゅう)弾投榔(とうろう)・突撃で沖縄県立二中がそれぞれ全国優勝したという記録がある。この成績を勝ち取るために、指導する側にも指導される側にも、多大なプレッシャーがあったに違いない。いったいどれだけのことが犠牲にされ、苦しい訓練が強要され続けたのだろうかと想像すると恐ろしくさえなる。そしてその結果、国内唯一の地上戦となった沖縄戦で、多くの鉄血勤皇隊が尊い命を散らしていった。毎年、餃子(ギョーザ)王国を争う全国都道府県ランキングに一喜一憂する様子が、テレビのバラエティー番組でおもしろおかしく描かれる。全国学力テストの順位も、それと大差ないものかもしれない。学校現場の教員を疲弊させ、児童生徒の真の学びの時間を奪うような、子ども不在の学力テスト対策を見直してみよう。順位を上げることは目標ではなく評価指標にすぎない。

 主体的・対話的な深い学びを保障する授業改善を行い、子どもに寄り添う時間の確保を通して、沖縄の子どもたちの特性に合わせた、時代の評価に耐えうる学力向上を子どもたちと共に進めよう。将来、我々の取り組みが「一生懸命、間違えていた」とならぬように。