「原告適格認め検証を」 行訴法学者が意見書 辺野古訴訟26日判決


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埋め立て工事が進む名護市辺野古(空撮)

 名護市辺野古の新基地建設を巡り、辺野古周辺の住民が国を相手に起こした訴訟の判決が26日に言い渡される。市民側は県による埋め立て承認撤回を取り消した国土交通相の裁決が適切かどうかを問うが、国側は「原告としての適格性を欠く」などとして訴えを却下するよう主張する。2004年の行政事件訴訟法改正に携わった行政法学者は、法改正は原告適格の拡大を意図していたと指摘。適格性を認め、埋め立ての可否を検証すべきだとの意見書を那覇地裁に提出している。

 意見書を出したのは、政策研究大学院大学の福井秀夫教授。旧建設省(国土交通省)出身で、国側の指定代理人の経験もある。02~04年に行政訴訟検討会の委員を務め、行訴法の改正に携わった。

 行政訴訟は、国や自治体などによる処分の適法性を争うものだが、原告として認められるハードルが高いという課題がある。意見書は、04年の法改正について「行政処分によって権利利益が侵害される人を、合理的な範囲で正当に救済するために明確な基準を示し、救済範囲を広げる意図を持っていた」と明かす。

 公有水面埋立法により、国が海を埋め立てる場合は知事の承認が必要だ。13年、当時の仲井真弘多知事が埋め立てを承認。その後、軟弱地盤の判明などにより18年8月に県が辺野古沖の埋め立て承認を撤回した。工事は一時中断し、沖縄防衛局は国交相に審査請求を申し立て、国交相は19年4月に県の承認撤回を取り消す裁決をした。

 埋め立てが終わり、基地が完成すれば米軍の運用を規制する国内法はない。さらに米軍機による騒音被害を司法に訴えても、米軍施設の運用は日本の法の支配が及ばないとした「第三者行為論」で飛行差し止めを退ける判断が続く。意見書ではこうした現状も踏まえ、今回の市民訴訟が「法的に正当なプロセスに基づく、唯一無二の適法性検証手段」だと強調。基地建設と環境などへの影響を実質的に審査する貴重な機会だとして、原告適格を広く認める必要性は一層高いとした。

 裁決の取り消しを求める訴訟は、県も国を相手に起こしたが、一審、二審ともに、県の訴えは裁判所の審理対象に当たらないとして退けられた。県は最高裁に上告しているが、見通しは厳しい。

 福井教授は「原告が県でも住民でも、勝訴すれば工事は止まり、どちらも地域に大きな波及効果をもたらす」と述べ、市民訴訟の影響の大きさを指摘する。

 一方、憲法で独立がうたわれている司法について、辺野古の関連訴訟では政治的な忖度(そんたく)が働いている恐れがないかと懸念を示す。「厳然たる法的判断に徹することができるか否かは、日本の法治国原理の存亡を占う試金石になる」と、判決に注目する。

(前森智香子)