【識者談話】米軍基地維持の枠組み打破を(我部政明・沖縄対外問題研究会代表)<対日講話条約70年>


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我部 政明氏

 第2次大戦まで敗戦による領土割譲は当然視され、日本も外国の領土を奪い取ってきた。講和条約第3条で、南西諸島などの信託統治の表現が盛り込まれ「沖縄が日本から切り離される」との認識が日本側に生じた。米国は朝鮮など日本が放棄する領域を規定した第2条に沖縄が含まれないことを挙げ、打ち消した。

 大戦終結前から沖縄の扱いを巡り、米政府内では日本帰属を訴える国務省と、軍事的要衝として日本からの分離を主張する軍部が対立した。第3条は信託統治で軍部の主張を取り入れつつ、日本の同意を盛り込むことで、米国の領土不拡大原則との整合性を図った。

 天皇は47年、日本領のままで長期にわたる沖縄の軍事占領を望むメッセージを送った。対日講和目前の51年、日本の主権を利用した沖縄での基地維持のアイディアへと結実する。沖縄の主権を持つ日本の同意の上、米国の沖縄統治を正当化できた。第3条で、例え100%に近い沖縄の人々の声でも、日本の多数意見の前では少数とされ、日本の同意を盾に外国からの批判や介入を抑え込むことができた。

 講和条約発効後、沖縄の米軍基地は日本政府の同意、支持、協力の下で維持される枠組みとなった。沖縄の人々が基地維持のコストを払い続けることで、良好な日米関係が持続・発展し、現在に至る。この枠組みで弱者とされた沖縄は、弱者の立場を自覚し、そこから自らの数少ないパワーを見つけ出し、有効に使うことで強者の論理を打ち破ることができよう。
 (国際政治学)