私にできることを 石原端子(沖縄大学准教授)<未来へいっぽにほ>


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 2021年1月に、コザ高校運動部主将が自死した事案をネットニュースで知った。最初は「またか」という思いで読んでいたが、「沖縄」という文字が目にとまり、愕然(がくぜん)とした。

 衝撃を受けた理由は二つあった。一つは、この沖縄で起こってしまったこと。カミングアウトすると、私は沖縄に住み10年目を迎えるが、初年度は恥ずかしいことに、6月23日がなぜ休みなのかを知らなかった。その後たくさんの方々とお話しながら、沖縄戦のことを教えていただいた。戦後を必死で生き抜いた方が発する「なんくるないさぁ」の言葉の重みも、少しは理解できるようになってきた。だからこそ、ここ沖縄で、若者が自らの命を絶ったこと、そこにスポーツが絡んでしまったことにショックを受けた。

 もう一つの理由は、若者が自死に追い詰められたのは、私のような大人にも責任があると感じたからだった。

 大学で担当しているスポーツコーチング論の授業では、これまでスポーツ界で起きたハラスメント事案も扱う。さまざまな背景を持つ学生同士が意見を言い合える場をつくり、これからのコーチングについて本音で話し合ってもらう。日々学びを深めていく学生たちの活躍を楽しみにしている一方で、ハラスメント事案が絶えないスポーツ界に嫌気が差してもいた。何をやっても変わらないのではと、諦めの気持ちを持っている自分にも気付いた。

 コザ高の生徒が自死したことを受け、21年6月に県教育委員会が立ち上げた「部活動等の在り方に関する方針(改定版)検討委員会」のメンバーを引き受けたのは、私にできることをやっていこうとの覚悟だった。メンバーの皆さんとどのようなことに取り組んだのかは、次回以降書いてみたいと思う。