【識者談話】沖縄の不平等、全国調査から見えた県民との意識のずれ 熊本博之・明星大教授


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熊本博之氏(明星大教授)

 全国世論調査では、沖縄県の米軍基地負担を不平等だと感じる人は79%に上り、大幅削減を求める声も多い。しかし、具体的に解決するとなると人ごとになってしまう「総論賛成、各論反対」の意識が表れた。

 自分の住む地域への基地移設で反対が大きく上回ったのは、危険でコントロールできないと思うからだろう。沖縄県民もそれは同じだ。

 県民調査と比べると、経済格差を巡る認識の違いが顕著で衝撃的だ。県民の93%が他の都道府県と格差があると思っているが、全国調査では53%にとどまる。

 沖縄県は観光や基地関連の交付金で恵まれているとみる人がいるのだろうが、県民の不満が伝わっていないということでもある。この意識のずれが基地問題の解決しない要因の一つではないか。

 ロシアのウクライナ侵攻や中国の海洋進出で国防への関心が高い今こそ、沖縄の現状を踏まえて政策を議論すべきだ。米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設は本当に必要か、米軍依存を続ける是非は―。もう一度考えないと状況は変わらない。

 「辺野古反対」の沖縄の民意は政府に無視され、交付金による県民の分断も著しい。決定権がなく負担を強いられる理不尽さを知れば、私たちも押し付けに間接的に加担していると気付くのではないか。本土側の責任は大きい。


 くまもと・ひろゆき 1975年、宮崎市生まれ。早稲田大助手などを経て2019年から現職。専門は地域社会学。近著に「辺野古入門」。
(共同通信)