新型コロナウイルスの新規感染者数が高止まりする状況は、高齢者の生活に大きく影を落としている。外出を控え、友人らと集まることさえままならない。毎週金曜、那覇市安里でコーラスを続けてきたひめゆり同窓生らは、2年ほど活動を中断している。メンバーの与儀毬子さん(92)は感染を避けるため自宅だけで過ごす日々に「もう少し減れば、集まれるかもしれない。でも1500人いたら怖くて外に出られない」と話す。
中学校の音楽教員だった与儀さん。ピアノが得意で、自宅に自然と同級生が集まって歌うようになった。「ひめゆりコーラス」として1995年ごろに発足。97年ごろから同窓会館で集まるようになり、メンバーは同窓生40~50人まで増えた。レパートリーは年間100曲に上った。「みんなで一緒に歌って冗談を言い合い、学生時代のように名前を呼び合っていた。良い老後が過ごせると思っていた」
歌と共にあった幸せな日常はコロナで一変した。流行が始まった2年ほど前から活動は中断。与儀さんは1人暮らしで、家族は近くに住んでいるが友人と顔を合わせることはほとんどなくなった。メンバーは90歳を超え、この間に亡くなった友人も。「身近な人たちが逝っちゃった。本当に寂しい。一番楽しく過ごしたい時期なのにね」
戦後、与儀さんと一緒に過ごしてきた同級生の翁長安子さん(92)も「死ぬまでコーラスを続けようね、と言っていたのに」と中断を残念がる。自宅のテレビで、爆撃にさらされるウクライナの様子などを見て、沖縄戦を思い出す日々。「寝苦しく、寝られないこともある」と吐露する。「もう少し感染者が減れば」。孤独な状況に追い込まれがちな高齢者らは恐怖と不安を抱え、収束を願っている。
(中村万里子)