色水遊びと保育者 宮城利佳子(琉球大学教育学部講師)<未来へいっぽにほ>


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宮城 利佳子(琉球大学教育学部講師)

 皆さんは色水遊びをした経験があるだろうか。保育者は色水遊びのために、実は多くの工夫をしている。

 例えば子どもたちが集中して遊びを続けられるように日差しや足元のぬかるみへの対策を行い、植物と水の確保場所と動線を確認して環境を整える。色水遊びが始まってからも、子ども自身がそれぞれの思いで遊びを発展させられるように、必要な援助を考える。

 色水遊びからジュース屋さん遊びへと発展してほしいと願う時も、保育者から遊びを始めるのではなく道具を用意してみたり、「ジュースみたいだね」と話し掛けたり、写真を用意してみたりと、さまざまな方法を検討する。「作ったジュースを持ち帰りたい」などのつぶやきも丁寧に拾い、方法を一緒に考える。摘んでいい花とそうではない花の区別や気温の変化に気付けるような援助もする。

 保育者は目の前の子どもに対し、子どもの経験を踏まえ、発達への願いをもって向き合う。「ジュース屋さんやろう」「この花は摘んじゃダメ」「こうやって持ち帰ったらいいよ」「寒いから色水遊びはやめよう」と、ただ大人の思いを伝えるのではなく、子ども自身が考える援助をする。そして子ども自身の工夫を他者と共有する援助をし、集団全体の遊びが発展できるようにする。

 色水遊びの楽しさが植物や科学への魅力、考える力、友達との関わりへとつながっていく。一つの遊びが多くの学びにつながるのも保育の魅力である。

 保育者は学びにつなげることを考えつつも、子どもと共に楽しみ、子どもの感動に共感する。学びよりも重視するのは、目の前の子どもの姿である。保育者の援助の下、友達と一緒に遊び込むことは、子どもの生涯の基盤となる。