米国の狙いは在日米軍基地の自由使用 密約文書入手した元記者・西山太吉さんが語る沖縄返還


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 沖縄返還を巡る日米密約情報を入手し逮捕された元毎日新聞記者の西山太吉さん(90)に、沖縄の日本復帰50年の思いを聞いた。

 佐藤栄作首相は任期中に沖縄返還を成し遂げるため、米国との交渉期限を1972年とした。自分の業績にしたいからだ。交渉は自ら期限を切ると不利になる。米国は「72年に返してほしいなら」と、返還を最大限自らの利益にしようとたくらんだ。米国の最大の狙いは、在日米軍基地の完全な自由使用にあった。

 在日米軍の出動には日本政府との事前協議が必要で、日米安保条約にも記載がある。しかし、返還交渉で、日本政府は在日米軍の自由使用を事実上認めた。はっきり言えば「イエスの予約」だ。事前協議条項は残っているが、在日米軍がイラクに行こうが何をしようが、日本政府の了解は事実上ないようなものだ。日本は、米軍の自由な基地になった。

 沖縄戦では全土が焦土となり、多くの人が死んだ。平和な姿で返してもらわなければ、本当の復帰ではない。(今の沖縄は)米国の戦略基地としてよみがえった戦争の島だ。沖縄返還は日米安保条約を変質させた。6500万ドルを秘密裏に渡してもいる。「返還、返還」と簡単に喜ぶ問題ではない。

 返還交渉は全てが密約だ。(入手した密約文書で)私が触れたのは氷山の一片に過ぎない。米国が公開した資料で全貌が分かったが、誰も日本政府を非難しない。これが日本の民主主義だ。私は国家の犯罪を暴いたわけで、国が私を裁く筋合いはなかった。何一つ罪に問われるべきことはない。誰も本当の沖縄返還を知らない。歴史上の重要な点を見落としている。


 にしやま・たきち 1931年山口県生まれ。71年、沖縄返還に伴う日米の密約情報を入手、国家公務員法違反に問われた。2006年、当時対米交渉にあたった故吉野文六元外務省アメリカ局長が密約の存在を認めた。

(共同通信)