県観光審議会(会長・下地芳郎沖縄観光コンベンションビューロー会長)が9日に答申した第6次沖縄観光振興基本計画(2022~31年度)の素案は、初めて入域観光客数を指標から外し、観光収入につながる延べ宿泊者数や満足度の向上を目標としていくこととした。「量から質へ」転換することで生産性の高い、持続可能な沖縄観光の構築が念頭にある。
入域客は18年度に初めて1千万人を超えた。しかし、競争激化に伴い事業者の収益や従業員の給与向上には結びつかず、県民所得は全国の7割の水準にとどまるなど経済全体の改善は思うように進まない。
また、観光客数が増えることで廃棄物や交通量の増加、新たな開発など、環境負荷も増す。脱炭素やグリーンリカバリーの観点からも、入域客の増加を追い続けていては沖縄が受ける恩恵は遠からず限界が来る。
自然環境と折り合いをつけ、持続可能な観光を目指すには、単に観光客数という「量」の拡大による成長ではなく、付加価値を高めて観光客1人当たりの消費額や滞在日数を伸ばす「質」の重視が鍵となる。
加えて、20年に感染が拡大した新型コロナウイルスによって、入域客数は30年前の水準にまで激減した。人流の回復には時間を要すると見られることからも、延べ宿泊者数を増やすことで復興を推進しなくてはならないだろう。
そのためにも、今後10年間は感染対策と効果的な観光施策の両立と共に、沖縄観光の質を担う人材確保と育成が求められる。
(與那覇智早)