【記者解説】県内地銀グループ3社の決算、損益を左右したものは


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 沖縄県内地銀グループ3社の2022年3月期の連結決算は、貸し倒れに備えた与信費用が損益を左右する形となった。新型コロナウイルスの感染拡大を受けて、与信費用を前年に積み増した琉球銀行とおきなわフィナンシャルグループ(OFG)は、経済活動の回復を背景に新たな積み増しが発生せず、増益に転じた。

 琉銀とOFGは、債権回収ができない場合に備える「一般貸倒引当金」を21年3月期に大幅に積み増した。22年3月期は一部の融資の返済が進んで債権者区分が改善し、与信費用が減少した。前期から「フォワードルッキング」と呼ばれる引き当ての手法を導入した琉銀は、連結経常利益が前期比41億円増、純利益は30億円増となり、全体の増益額を押し上げた。OFGは経常利益が80億円を超え、3社の中で最高だった。

 琉銀によると、業種別では宿泊業が依然厳しいが、不動産や飲食サービス、医療・保険分野では引き当てが減少傾向にある。OFGでもコロナ関連融資の返済が一部で進み「与信コストは落ち着いている」(山城正保社長)という。一方、沖縄海邦銀行は22年3月期、引当金について前期比2・9倍の3億800万円を計上した。観光業を中心に引当率を見直し、不良債権残高や不良債権比率が上昇した。今回の積み増しで与信費用は「十分性が確保された」(湖城誠一郎専務)といい、今後のピークアウトを見込む。

 23年3月期の業績については、3社とも減収と予想する。世界的な燃油や原材料の価格高騰、不安定な為替相場などの影響は県内にも波及しており、事業者の経営を圧迫する懸念材料は深刻化している。資金需要が長期的に見通せず、融資以外の収益源の多角化も問われる中で、地域経済の活性化と安定経営の両立という課題への厳しい舵取りが続いている。

(當山幸都)