次期振計で未来開く 宮田裕(沖大、沖国大特別研究員)<識者評論>


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宮田裕氏

 沖縄振興策は(1)沖縄振興特別措置法(2)沖縄振興計画(3)高率補助(4)予算の一括計上―の枠組みからなる。琉球新報の集計によれば、国は復帰時から2020年度までに沖縄から11兆5079億円の国税を徴収している。この間の沖縄予算の総額は12兆3252億円だが、(国から地方への財政移転で)恩恵を受けた額は実質8173億円となる。予算並みに国税を徴収している。

 日本の財政援助が始まる1963年度までの17年間、国家財政から見捨てられていた反省から高率補助が適用されインフラ格差は解消されたが、沖縄社会の片隅では「貧困連鎖」が続いている。子どもの貧困率は約30%で、母子世帯の貧困率が突出している。

 沖縄振興策は機能したか。自立指標を分析すると物的生産力は5.7%(全国23.0%)、域内自給率64.9%(全国81.8%)、自立係数0.57(全国1.1)、所得格差74.8%だ。自立収支は年間8千億円の赤字を抱える。

 産業の側面から見ると、経済規模は4兆5千億円。振興事業費が投入されたが自立の土台をなす製造業の割合は4.3%で、沖縄経済は「モノをつくらない」経済体質になっている。生産手段を持たない経済から自立は生まれない。経済指標を丹念に追えば、自立への道は遠い。

 日本復帰50年、新たな振興計画が始まる。素晴らしい可能性を開いていかなければならない。10年後の沖縄はどう変わっているか。次期振興計画は、その問いに応えなければならない。