規格外ニンジン救え 糸満・喜屋武の「美らキャロット」 パンやジュースに加工、口コミからホテルも協力


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美らキャロットの有効活用をPRする(左から)栄盛満さん、本間カタリンさん、新垣哲司さん=4月27日、糸満市喜屋武の岬ガーデン

 糸満市特産のニンジン「美らキャロット」の主要産地である同市喜屋武地区の住民らが、規格外のため大量に破棄されていたニンジンの“救済活動”に汗を流している。生産農家から買い取ったものを消費者やホテル、飲食店に安価で販売したり、手作りパンに加工して売ったりと、食品ロス削減に取り組みながら地元特産品のPRにも力を注いでいる。

 「一面オレンジ色に染まる畑を見て驚いた。品質は最高なのに、見た目が劣るだけで捨てられるなんてもったいない」。2021年に喜屋武地区へ移住したウクライナ南部オデッサ出身の本間カタリンさんが、集落一帯の畑で規格外のニンジンが大量に破棄されているのを目の当たりにし、ユリ栽培法人「岬ガーデン」を営む栄盛満さんに相談したことで取り組みが始まった。

 美らキャロットは12月~4月に収穫期を迎えるが、毎年約3割がいびつな形や規格より小さいサイズなどによって市場に出せず、破棄されている。

 どうすれば規格外品を有効活用できるのか悩んだ栄盛さんは、まずは生産農家から市場に出荷しないニンジンを10キロ当たり400円で買い取り、知人らに配ることから始めた。市出身の元県議会議員、新垣哲司さんにも協力を仰ぎ、普及に務めた。本間さんも得意の料理を生かし、ニンジンピューレに伊平屋産黒糖を加えた手作りパンの販売を開始した。

 喜屋武地区の取り組みは口コミで広がり、3月下旬には何か協力できないかと名乗り出たホテルアンテルーム那覇の山森薫支配人が直接現地を訪れ、350キロを買い取った。ホテル内でジュースにして提供したところ、利用客から「甘くておいしい」と大好評だったため原材料を追加で買い取り、継続して提供している。同ホテルの担当者は「生産農家を支援しながら、利用客に還元できる取り組みを続けていく」と話す。

 本間さんは「ウクライナでは何でも最後まで大事に使い切るのが当たり前。取り組みを通して県内でもSDGsの機運を高めつつ、色鮮やかで糖度の高い美らキャロットの可能性を広げていきたい」と意気込んだ。

 栄盛さんは資源を有効活用することで食品ロスを減らし、生産農家にも還元できると取り組みの意義を語り、「いずれは喜屋武地区全体が観光農園となり、地域活性化にもつながれば良い」と期待を寄せた。(当銘千絵)