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平和あってこそのビジネス 「沖縄宝島」海老名店・店長 神野河晃洋さん<県人ネットワーク>


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神野河 晃洋さん

 その一角は三線の音に合わせた歌も流れる沖縄ワールドだった。神奈川県海老名市に「沖縄宝島」がオープンしたのは4月21日。巨大ショッピングモールの中央付近の角地。人の往来が絶えない好エリアに位置する。そのエリア内で沖縄物産のディスプレーに取り組んでいたのが神野河晃洋さん(43)だ。店頭には泡盛やオリオンビール。沖縄出身者なら愛用し、生活を彩った商品の数々がふるさとにいざなってくれる。

 「オープン初日から県出身者の方も来てくれています」。平日の開店でありながら店内は客足がひっきりなしだ。海老名店は沖縄物産企業連合(那覇市、羽地朝昭社長)の直営8店舗目にあたる。

 店長を任されたのが神野河さんだ。故郷を離れ、上京してからの生活は17年目になる。赴任当初は「人の多さにびっくりした。至る所でお祭りをやっているよう」。大学生の頃は福岡で過ごしたが、それを上回る人の多さに驚いた。

 当時、NHKの連続テレビ小説「ちゅらさん」の放送の影響もあり「商品は順調な売れ行き」が続いた。そして20年近くになる勤務を通じて、外にいて見えてきた沖縄は「海、そして風景…。沖縄の良さをあらためて実感する」。郷愁に駆られ、かみしめるように話す。

 ここ数年のコロナ禍で県経済は大打撃を受けた。それは2001年の米中枢同時テロが県経済に影響を与えた記憶をよみがえらせる。その教訓も踏まえ「少しでも多く県外への販路をつくるのが大事だなと感じる。物産を通じて沖縄と客とのつながりを途絶えさせない」。故郷の窮地に、いても立ってもいられず、店の運営に奮闘する。

 県外にいて何より思うのは沖縄戦と慰霊の日だ。「後世に伝える大切な日だと感じる」。今年は平和を伝える県内関連施設への寄付金を店頭で呼び掛けて募っている。「沖縄に関わる企業の役割。平和あってこそのビジネスですから」。自らに課したミッションだ。
 (斎藤学)


 かみのかわ・あきひろ 1978年10月、八重瀬町東風平生まれ。糸満高校を経て福岡の大学に進学した。その後、沖縄物産企業連合に就職。同社が直営する東京都町田市の町田店店長に就任し、4月に開店した神奈川県海老名市の海老名店店長も務める。