「発明」商業化がカギに 健康長寿・CS分野への研究注力 OISTの起業家支援拠点構想


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OISTが計画するノースキャンパスの青写真。左から研究棟・技術移転エリア、住居エリア、科学アミューズメントエリアのイメージ図がそれぞれ配置される(OIST提供)

 沖縄科学技術大学院大学(OIST)が掲げたイノベーション・ハブ構想の実現には、大学発の「イノベーション(発明)」の商業化が青写真通りに進むかが鍵となる。OISTは専門のアドバイザーと施設を確保し、スタートアップ(起業)を支援する体制を構築。ベンチャーキャピタルファンドとも連携し、年末までに40~50億円を調達する。イノベーションの商業化で資金を調達し、ノースキャンパス整備でさらなるイノベーションの促進につなげる好循環を生みだしたい考えだ。

「発明」商業化が鍵

 OISTはさらなる投資を呼び込むために健康長寿、量子コンピューターによるサイバーセキュリティー(CS)分野の研究にも注力する方針を掲げる。既に量子コンピューターの分野で世界的に権威のある研究者を招いた。

 ピーター・グルース学長は「資金は集まってきており、50~100のスタートアップを支援できる。だが、起業家たちに入居してもらうスペースがない。技術の商業化に向け世界中からやってくる人々のために構想を掲げた」と説明した。

 ノースキャンパスは自動運転車などが走る「スマートシティー」の整備を目指し、地元の人々や観光客が楽しめる科学アミューズメント施設エリアも整備する計画だ。

 OISTは政府補助の安定的な研究資金「ハイトラスト・ファンディング」で運営されている。一方、国の新たな沖縄振興基本方針で毎年の運営費約200億円台のうちの20%を外部資金で調達するよう求められた。

 この勧告に対し、グルース学長は現在の教員数は約90人で、創設時に掲げた300人体制に達していないと反論。「OISTはまだ規模が非常に小さい。沖縄にハイテク産業をつくる政府目標を達成するためには適切な予算配分が必要だ」と語った。(梅田正覚)