沖縄振興特別推進交付金(ソフト交付金)事業を巡り、県の手続きの不備によって、本来得られるべきだった交付金額から、10億円あまりが目減りすることになった。ソフト交付金は執行残などで毎年「不用額」が出ており、実際に県財政へ影響を与えるかは不透明だ。県は「市町村事業にも影響が出ないという形で対応する」(宮城力総務部長)と説明するが、県の一般財源に影響を与える可能性も出ており、財政運営への批判も出てきそうだ。
対象となった事業は石垣市が事業主体となっている生乳加工処理施設の整備。2020年度の事業開始時に地盤改良の必要性が出たため、21年度に事業を繰り越し、同年度中に施設の大半は完成している。一方、新型コロナの影響もあり、冷却設備の部品が届かなかったため、22年度に約3億3千万円分の一部事業が「事故繰越」として、繰り越されたという。石垣市畜産課によると建物は7月に落成する予定で9月から運用を開始する。
内閣府によると、一括交付金など国の補助金を交付する事業で、翌年度に予算を繰り越す場合には、関係法令で自治体が国に事業の進捗(しんちょく)や実施状況について報告する義務を課している。これまで繰り越しが発生した事業は、この原則に基づいて報告を受けていた。ところが、今回の事業は、所管する内閣府への報告は「繰り越しの報告と金額のみで、事業の『実績』部分、実施状況についての報告がなかった」と指摘する。
一方、県によると、「事故繰越」で事業が3年間にまたがった過去の事例では、事業が完了した後に報告、国庫請求することもあった。県は3月の段階で内閣府と、繰越額をすり合わせたが、4月に21年度の事業報告と請求が必要だという認識はなかった。県と内閣府の間で、補助金の事務処理に認識のずれが出た形となっていた。
宮城力総務部長は1日の記者会見で「繰越事業における実績報告の内容について、県内部でダブルチェックを徹底する」と述べ、再発防止を徹底する姿勢を強調した。
(池田哲平)