【深掘り】「有事想定の調査か」南大東空港に相次いだ米軍の使用予告 その背景と地位協定の壁


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
海兵隊岩国基地所属のF35Bステルス戦闘機=2日、米軍嘉手納基地

 米軍が10日にF35ステルス戦闘機の南大東空港への飛来を通告したほか、今年に入り同空港の使用を相次いで予告していたことが分かった。予告はいずれも取りやめとなったものの、識者からは「有事を想定して民間施設の使用条件を調査しているのではないか」との指摘も上がる。県は民間空港や民間港を使用しないよう米軍に求める立場をとるが、日米地位協定第5条は米国の航空機や船舶が日本の港、飛行場に出入りできる旨を定めており、米軍は民間施設を自由使用できる状態にある。

 緊急着陸などで民間空港への米軍機の飛来が頻発している。今年3月に、普天間飛行場所属の垂直離着陸輸送機MV22オスプレイが新石垣空港で緊急着陸した。翌月には宮古空港でも、フィリピンから移動中の米軍普天間飛行場所属の大型ヘリコプター4機が給油目的で着陸している。

 県基地対策課は「米軍機の民間空港の使用は自粛を求める」との立場をとってきた。それでも地位協定上、民間港や民間空港の自由使用が許され、通告があった場合に行政が拒否するのは難しい。県はこれまで「民間機や民間船舶の安全確保が困難」などとして、地位協定を改定し、米軍による民間港・空港利用を禁止するよう政府などに求めてきた。

 台湾有事を念頭に日米が南西諸島の島々を軍事拠点化する計画が浮上する中で、米軍にとって空港や港を備える有人離島の「軍事的価値」が増しているとの見方もある。

 南大東への飛来が予告されたF35は、沖縄の米軍基地や自衛隊基地には配備されていない機種だ。県内には米軍岩国基地(山口県)所属機などが、嘉手納基地や普天間飛行場に外来機として飛来している。

 南大東空港の滑走路が1500メートルと比較的短いため、ジャーナリストの布施祐仁氏は「垂直・短距離離着陸が可能で、海兵隊が運用するF35のB型ではないか」と分析する。F35B型は強襲揚陸艦などの艦艇への離着艦も可能で、米軍伊江島補助飛行場内にある揚陸艦を模した発着場でも訓練を実施する。

 海兵隊は近年、離島に分散展開し、軍事拠点化する「遠征前方基地作戦」(EABO)を採用し、南西諸島周辺での演習や訓練を活発化させてきた。海兵隊が部隊を離島へ投入する際、既存の空港や港湾を使用することも想定されている。

 布施氏は「(今回の飛来予告は)EABOで使う滑走路の調査の可能性はある。今後も、(使用条件調査のため)地元住民の反応も踏まえつつ、さまざまな形で港や空港を使用することがあり得る」と警鐘を鳴らした。

(塚崎昇平)