〈111〉画期的な阻害剤 免疫の働き回復、併用も


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 皆さんは肺がんに対する薬物療法といえば何を思い浮かべますか? 多くの方は抗がん剤というイメージを持つのではないでしょうか。

 現在も抗がん剤が大事な役割を持つことに変わりありませんが、2000年代に入り二つの画期的な薬剤が登場しました。一つが分子標的薬、そしてもう一つが本日のテーマの免疫チェックポイント阻害剤です。

 私たちの体内に侵入した細菌やウイルスなどの病原体や体内に発生したがん細胞などを、免疫細胞が攻撃・排除する仕組みを免疫と呼びます。

 一方で、免疫が過剰になると生体に対するダメージが生じるため、その攻撃を弱める抑止力も備えており、これを免疫チェックポイントと呼びます。これは18年にノーベル生理学・医学賞を受賞された本庶佑先生が見いだしました。

 実はがん細胞も攻撃を逃れるために免疫チェックポイントを利用しています。免疫チェックポイント阻害剤はこの免疫チェックポイントを解除することで免疫の働きを回復させ、がんへの効果を発揮する治療薬です。

 この治療はよく「免疫のブレーキを外す」と表現され、従来の抗がん剤に比べ効果が長期間持続する方も多く、根治は困難と考えられている進行期肺がんの患者さんにとって大きな希望になり得る治療だといえます。しかしブレーキを外すことで免疫が過剰に暴走してしまい、それに関連した副作用が時に出現します。

 この副作用は、甲状腺・肺・胃腸・肝胆膵(すい)・神経・筋・皮膚など全身の臓器に出現する可能性があり、まれですが致死的なものもあるため注意が必要です。また、残念ながら全ての方に効くわけではなく、効果が乏しい方もいます。効果を高めるために抗がん剤との併用・免疫チェックポイント阻害剤同士の併用も行われるようになってきました。

 どういった方に勧められるかは本人の体力・合併症の有無やがんのタイプによって異なるため、治療に際しては主治医・専門医と相談するようにしましょう。

(久田友哉、国立病院機構沖縄病院 呼吸器腫瘍科)