ざわわ…「さとうきび畑」歌碑10周年 作者・寺島さんをしのび、6月26日に建立記念コンサート 読谷


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建立から10周年を迎えた「さとうきび畑」の歌碑=読谷村高志保

 【読谷】戦争で亡くなった父への思いを歌う「さとうきび畑」の歌碑が読谷村高志保に建立されてから10周年を迎えた。歌碑の建立10周年を記念したコンサートが26日、同村座喜味の読谷村文化センター鳳ホールで行われる。平和を祈り「さとうきび畑」を作詩・作曲した故・寺島尚彦さん(1930~2004年)の妻・葉子さんや、娘でソプラノ歌手の夕紗子さんら、故人にゆかりあるメンバーが出演する。夕紗子さんにコンサートへの思いを聞いた。
 (藤村謙吾)

 「さとうきび畑」の歌碑は、2010年末に建立に向けた実行委員会が発足し、チャリティーコンサートなどを通じて資金を集め、12年4月に完成した。当時の状況について、夕紗子さんは「東日本大震災も発生し、寄付を募ってよいのかという思いもあった。しかし、戦争を体験した沖縄の人々をはじめ、『平和のために』と一人一人が呼び掛け、草の根運動の集結のような形で完成に至った」と振り返る。

 夕紗子さんは01年、テレビ番組の収録で尚彦さんと沖縄を訪れ、糸満市の摩文仁の丘やひめゆり平和祈念資料館を回り、「さとうきび畑」に込めた思いを聞いた。同年、沖縄で初めてのファミリーコンサートを宜野湾市の佐喜眞美術館で開き、尚彦さんの伴奏で同曲を歌った。

寺島夕紗子さん

 翌02年に沖縄平和祈念堂で開いたコンサートが、尚彦さんとの最後の共演となった。コンサートでは、尚彦さんが平和の礎に眠る人々を思って書いた「緑陰(こかげ)」を初演した。歌が始まったとき、開け放たれた平和祈念堂の扉の向こうから、礎に眠る人々の思いが流れ込んでくるような感覚に、出演者は包まれたという。

 夕紗子さんは「歌碑が完成し10年がたっただけなのに、世界が新たな戦争に向き合う状況に陥るとは思わなかった。立ち止まって平和について考えなさいというメッセージを突きつけられているように感じる」と悔しさをにじませる。「父には『さとうきび畑』は、淡々と歌うように言われた。しかし、今の状況の中で、淡々と歌うことを、とても難しく感じている。沖縄でのコンサートは特別なもの。心の中にある思いを乗せて歌わせていただきたい」と語った。

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 「さとうきび畑こんさあと」は26日午後2時開演。チケットは2500円。チケットなど問い合わせは村観光協会(電話)098(958)6494。

 25日午後3時~午後8時、26日午前10時~午後1時には、鳳ホールホワイエで写真家大塚勝久氏の「ざわわ写真展」も開催している。