なんと獣医師を経てのデビューだ。「うちなんちゅコミュニケーター」と言うべきか。「東京から沖縄を盛り上げる!」をテーマにSNSで県人らをつなぐ。そんなサイト「東京うちなんちゅ会」を来間祐一郎さん(43)が立ち上げた。
「人とのコミュニケーションに興味を持ってしまったから」と獣医師を小休止している。聞くと獣医師は、動物の治療が本務ではあるが「動物はしゃべれないので、むしろペットロスなどによる人の心の癒やし、カウンセリングが大切になる」と話す。それが高じて人とのコミュニケーションに関心の比重が移った。
「興味の赴くままに。直感だけを信じて生きてきた」と話すが、半端な移り気ではない。興味には徹底して打ち込む気質だ。「父が『ああしろ、こうしろ』と指図する性格ではなく生き方を尊重してくれた。託す思いはあったと感じますが、今はむちゃくちゃ感謝しています」
高校時代はバスケットボールに明け暮れた。3年生の夏まで続けたせいか、大学受験を目前に時間不足は否めない。獣医師を目指し浪人生活へ突入したが、バスケへの情熱を勉強に注いだ末に鹿児島大学へ入学し獣医師となった。
獣医師生活では「バッタを持ってきた人もいた」と言う。さすがに昆虫は手に余る。そんないろんな人々と接する中で、多様な人への関心は募る一方。ネットを活用し、人と人のマッチングも行う新スタイルのコミュニティーの創設へ前のめりになった。
東京の沖縄出身者はおよそ10万人と言われる。このサイトで追求するのは画面越しのドライな関係性ではなく「実際に顔を合わせるコミュニケーションの場」だ。「本物の豊かな人間関係は『フェース・トゥ・フェース』からこそ生まれる。これは沖縄の先輩方から学んだ」と語る。
東京県人会や在京エイサー団体、琉舞団体など沖縄コミュニティーへの入り口、架け橋を目指す。
「オジー、オバーから子や孫を幸せにしてあげてほしいと言われている気がするんです」。次代へ幸せをつなぐ一人として自らのミッション完遂へひた走る。
(斎藤学)
くりま・ゆういちろう 1978年9月に現在の豊見城市に生まれる。長嶺小学校、長嶺中学校を経て那覇高校、鹿児島大学を卒業した。うちなんちゅは「生まれではなく、マインド」をテーマに「東京うちなんちゅ会」に取り組む。