七夕の7日、参院選は最終盤の三日攻防に入った。五色の短冊に願いを書いてササの葉に結ぶ七夕の風習とは異なるが、選挙も短冊に似たサイズの投票用紙に候補者の名前を書き、願いを託す。県内の有権者は投票用紙にどんな願いを込めたのだろうか―。
那覇市の夫妻は、那覇市のサンエー那覇メインプレイスで期日前投票を済ませた。共に航空業界で働き、コロナ禍が家計を直撃した。妻(27)は「子育ての費用は増していくのに、給料は減っていく」と苦笑する。事前に相談しないので夫婦は互いの投票先を知らないが「子育てしやすい社会」の実現は共通の思いだ。長女はもうすぐ2歳。投票後に配布される「投票所来所カード」は小さな手に握られた。夫(29)は「母子家庭や父子家庭はもっと大変だと思う。この子たちが大人になる頃には、支え合って子育てしやすい社会になってほしい」と願った。
10・10空襲があった1944年生まれの男性(78)の願いは一つ。「戦争のない世の中」だ。父はインドネシアで戦死し、戦後の混乱期を母子でくぐり抜けた。母は新聞やテレビの記者として働いたが、生活は貧しく、男性は狭い部屋の押し入れがベッド替わりだった。「母は男社会の業界で必死に働いた。大変だったと思う」と、苦労を思いやる。「ウクライナも父親が戦死した家庭が多くある。戦争は終わった後も大変なんだ」。海外の戦争も自分ごとと捉えて憤り、平和への一票を投じた。
那覇市の同性パートナーシップ登録制度を利用する40代女性は、同性婚の法制化と選択的夫婦別姓に関する公約を読み込んだ。パートナーはトランスジェンダーで戸籍上の性別は女性。「長年一緒に暮らし、支え合って生きているにも関わらず、“配偶者”と認められないことは悲しい」と話す。
法的に家族として認められないことで、パートナーが入院して介護が必要な時でも、仕事上の休暇制度が利用できないなどの不利益がある。「結婚できていれば得られる権利が奪われている。差別だと思う。セクシャルマイノリティーへの差別や偏見をなくしてほしい」と思いを語った。
(稲福政俊、赤嶺玲子)