地元宜野湾、得票伸びず 伊波陣営、「無名の官僚」に詰め寄られ<激闘の舞台裏・2022参院選>中


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空席が目立った伊波洋一陣営の宜野湾支部総決起大会=2日、宜野湾市民会館

 2888票差という、「オール沖縄」勢力の薄氷の勝利を象徴するような光景が選挙戦中にあった。

 7月2日夕刻の宜野湾市民会館。再選を目指す伊波洋一氏(70)の宜野湾支部総決起大会の会場は、空席ですかすかだった。宜野湾は伊波氏の出身地で、市長を2期務めた“お膝元”だが、1200席を収容する会場に集まったのは90人ほどしかいない。伊波氏の選対幹部は、集まりの悪さに「これはまずい」とつぶやいた。

 台風の影響で悪天候となり、屋外での開催から会場を急きょ変更したという事情はあったものの、その5日前に同じ会場で開かれた自民新人の古謝玄太氏(38)の宜野湾総決起大会は多くの支援者が詰めかけていた。

 大票田の那覇市と革新地盤の本島中部でできるだけ大差を付けて逃げ切る―。これが伊波氏を支援するオール沖縄勢力が描いたシナリオだった。しかし結果は那覇市で3230票差と伸び悩み、伊波氏の地元の宜野湾市はわずか906票差。伊波氏が「無名の官僚」と評した元総務官寮の古謝氏に詰め寄られた。

 伊波氏が何とか再選にこぎつけたのは、古謝氏が従来の保守地盤である本島北部、南部や離島で思うように票の上積みができなかったことが大きい。逆にこれらの地域では、伊波氏の陣営が踏ん張りを見せた。

 伊波氏を支援したある県政与党県議は、古謝陣営の運動について「首相ら大物の応援演説や集会への動員はすごかったが、どれも打ち上げ花火。知名度不足といいながら、地方議員が地道に動いているとは感じなかった」と振り返る。選挙戦中には、オール沖縄を率いる玉城デニー知事が新型コロナウイルスに感染し、伊波氏の応援に入れなくなる事態もあった。そうした状況だったが、伊波氏はオール沖縄勢力が今年の市長選で4連敗した悪い流れを断ち切り「知事選につながるとても貴重な勝利だ」と評価した。

 ただ、伊波氏は今回、6年前の35万6千票から8万票も減らした。薄氷の結果は、蒸発した支持層をどう取り戻すかというオール沖縄の体制立て直しの必要性をも映し出す。

 「県民が抱える課題、県に対しこうしてほしいという要望を丁寧に分析する必要がある。政策を丹念に研究したい」。投開票日から一夜明けた11日、玉城知事は投開票まで2カ月に迫った知事選に向け、こう強調した。
 (’22参院選取材班)

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 全県選挙としては近年まれにみる大接戦となった参院選沖縄選挙区の舞台裏を振り返る。