〈114〉緩和ケア 良いがん治療に必要


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 「緩和ケア」という言葉にどのようなイメージをお持ちですか? 一般的に、がんなどを患った患者さんが治療の術がなくなった時や治療を諦めた時に受けるもの、死にゆく最期の場所、などと捉えている方は多いかもしれません。

 2002年、世界保健機関(WHO)による緩和ケアの定義が公表されました。日本でも2016年のがん対策基本法改正の際に、緩和ケアとは「がんその他の特定の疾病に罹患した者に係る身体的もしくは精神的な苦痛または社会生活上の不安を緩和することにより、その療養生活の質の維持向上を図ることを主たる目的とする治療、看護のその他の行為をいう」と定義されました。言い換えれば、緩和ケアとは「患者さんが治療や療養をしていく上で直面するさまざまな問題をサポートしていく治療、ケア」と表現できるでしょう。

 がん治療において緩和ケアが果たす役割は多岐にわたります。一つは「人生の終わり」に向けて残り時間を自分らしく過ごせるようにサポートする、いわゆる終末期ケア。もう一つの重要な側面としてお伝えしたいのが、がん診断の早期や、がん治療の過程で必要となるケアです。

 患者さんの気持ちのつらさに対する精神的なケアや、治療に伴う身体的な苦痛を緩和する支持療法(サポーティブケア・抗がん剤治療や放射線治療の際に生じる副作用に対する治療など)、社会的問題に対するサポート(在宅療養の支援、経済生活に関する情報提供など)がこれに含まれます。

 がん治療と並行して必要な緩和ケアを行うことで、がん治療を受ける際の心配や不安、治療に伴って生じる症状などを早めに察知・診断し、解決できるよう対応することが可能となり、それが患者さんとご家族にとって無理のない、より良い生活につながります。

 早期から緩和ケアを受けたがん患者さんにおいて、生活の質が改善し生存期間が延長したとする報告もあります。緩和ケアに関する適切な理解が広まることで、より良いがん治療を受けられる患者さんが沖縄でもさらに増えることを願っています。

(大宜見由奈、友愛医療センター 外科)