有権者、変革を期待か 参政党が勝敗を左右 支持層の傾向<激闘の舞台裏>下


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
参院選で参政党の街頭演説に駆け付けマイクを握る「川満しぇんしぇ~」こと川満聡さん(手前右)=6月24日、那覇市内

 「いつも『誰に投票したらいいの?』と聞いてくる知り合いが、今回は初めてユーチューブの動画を見て参政党に決めたと言っていた」。ある保守系市町村議員は驚きを隠せない。

 参政党は「投票したい政党がないから、自分たちでゼロからつくる」をキャッチフレーズにする保守政党だ。沖縄選挙区から立候補した元福岡県警警察官の河野禎史氏(48)はほとんど地盤がない状態から、上位2氏に次ぐ3番目となる約2万2500票を獲得した。

 出口調査によると、自民党支持層の一部保守層のほか、20、30代の無党派層から一定の支持を得た。参政党比例代表の県内得票率は全国一位の4・65%。初の国政選挙で議席を獲得し、国政政党入りを果たした。

 「参政党にどれだけ票が流れるか」。投票前から全国的な躍進が予想された参政党の影響に、両陣営幹部は頭を悩ませた一方、期待も募らせた。

 事実上の一騎打ちとなった選挙戦は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設に反対する「オール沖縄」勢が支援する伊波洋一氏(70)が自民の古謝玄太氏(38)=公明推薦=を2888票の僅差で破った。得票数を見ても参政党が勝敗を左右した側面も大きかった。

 伊波氏が土俵際まで追い詰められる衝撃の結果を受け、短文投稿サイト「ツイッター」には「#オール沖縄反省会」とのハッシュタグが拡散。支持者とみられる人々の不満や提言が相次いだ。「若者がもっと選挙に行くようになると、このままじゃ次は確実に負ける」「後継をちゃんと育ててほしい」などと世代交代を求める声が上がった。

 くしくも今回は沖縄が米施政権下から日本に復帰して50年の節目に行われた参院選。両氏の主張と経歴、支持層は復帰した1972年を起点とした「復帰前」と「復帰後」で鮮明に分かれる象徴的な闘いとなった。

 両氏の支持層の傾向は出口調査でもくっきりと分かれた。古謝氏は復帰前の沖縄を体験していない10~40代の支持を集め、伊波氏は復帰前を知る50歳以上の世代の支持が高かった。世代別投票率は若年層より高齢層が高かったため、古謝氏は競り負けた側面が大きい。

 選挙戦に関わった若者の一人はこう語る。「運動は全般的に選挙に詳しいベテランが引っ張っており、若者に考えがあっても意見しにくい。若者の政治参加はまだまだ障壁があると感じた」

 近年まれにみる大接戦の激闘は、県内における従来からの政党・政治勢力に対し、世代交代などの変革を期待する動きの一端かもしれない。 (’22参院選取材班)