日系米兵の足跡追う 「戦争終わった」呼び掛け 住民救う


社会
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沖縄戦末期、日本兵が住民を壕から追い出すなどした状況をデイビッド・オノさん(右)に説明する大城藤六さん(左)=9日、糸満市真栄平

 ロサンゼルスKABCテレビのニュース・アンカーで日系アメリカ人のデイビッド・オノさんらが、沖縄戦を経験した、日系2世の米兵らの足跡を取材するため来県した。今月9日には、糸満市真栄平で投降の呼び掛けを聞いた大城藤六さん(90)にインタビューした。大城さんは、住民が出て行くことを決めたのは、ハワイ帰りの真栄平の住民2人が他の住民を説得する出来事があったと証言した。2人のことを書き残そうと字誌の編さんも計画している。

米TV・オノさん取材 糸満真栄平 大城藤六さん証言

 沖縄戦末期、壊滅状態となった日本兵が真栄平一帯に逃げ込み、米軍の攻撃が集中した。日本兵は住民を避難壕から追い出し、虐殺も起きた。米軍は集落を包囲して一斉射撃を計画した。その前に日系2世の米兵が集落の北側の丘に拡声器を置き、日本語で住民に投降を呼び掛けた。大城さんは「戦争は終わりました。何も持たずに出てきなさい」という言葉を聞いたという。

 戦時中、住民の口から軍の情報が漏れるのを恐れた日本軍は「捕虜になれば女性は暴行された後に殺され、男性は戦車でひき殺される」などと恐怖心を与え、住民を米軍に投降させなかった。大城さんも「鬼畜米英」などと教えられていたと話す。当時、呼び掛けを聞いた真栄平の住民は出て行くのをためらった。その時、カナダで医学を勉強した経験のある玉城武彦さんと、新垣さん(名前不詳)というハワイ帰りの2人が、住民らに「米軍は住民を殺さないと思う」「出た方がいいよ」と声を掛けたという。

 日系2世の米兵が住民に投降を呼び掛け、真栄平側でもハワイ帰りの2人の説得があり、約1500人の住民が助かった経緯が大城さんの証言で浮き彫りになった。大城さんは「2人がいたからこれだけの住民が助かった。後世に伝え残したい」と語った。

 オノさんは日系アメリカ人に関するドキュメンタリーを数多く制作する。「マイノリティーでもある日系2世の米兵がどのように沖縄の人々を助けることになったのか、沖縄の人々はどう考えていたのか取材したい」と話した。

 (中村万里子)