沖縄の酪農家数、過去最少の48戸に 生産コスト増も取引価格は10年上がらず 「これ以上続けられない」廃業続く


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 沖縄県内の酪農家戸数が、1974年以来最少の48戸になったことが19日、分かった。飼料価格や輸送運賃などの生産コストが高騰し、生産者の負担が増大していることで経営の先行きが不透明感を増していることが原因。県内の酪農家から生乳の販売を委託されている県酪農農業協同組合の神谷翔平組合長は、「このままでは廃業に歯止めがかからない」とし、県外の団体とともに乳業メーカーに対して生乳取引価格の引き上げを求めている。

 同組合によると、2020~21年にかけて、新型コロナウイルスの拡大を受けて学校がたびたび休校したことで給食用牛乳の供給が滞った。さらに、ロシアによるウクライナ侵攻や円安で乳牛の餌の配合飼料が高騰するなど、酪農家にとって厳しい経営環境が続いている。県では21年度に4戸が廃業したほか、今年6月にも新たに1戸が「先行きが不透明な中、これ以上続けられない」として離農した。

 物価や社会情勢がめまぐるしく変動する中、全国の指定酪農団体も乳業メーカーに価格交渉に応じるよう求めている。県でも取引価格が約10年据え置きとなっていることから、県酪農農業協同組合は県内乳業メーカー3社に9月出荷分からの取引価格を1キロ当たり10円以上値上げするよう要請している。

 神谷組合長は「生産コストの負担は膨らみ続け、農家の自助努力では解決できないところまで来た。農家を守るために値上げに応じてほしい」と窮状を訴えた。

(当銘千絵)