【深掘り】「コロナでぼろもうけ」「飲食は協力してきたのに」「このままでは破滅」各業界から噴出する不満と本音 対処方針、沖縄県の判断は?


この記事を書いた人 Avatar photo 琉球新報社
観光客が増えつつある国際通り=20日夕、那覇市の国際通り

 新型コロナウイルスの1日の新規陽性者数が5千人を超え、県内の感染拡大に歯止めが掛からない状況が続いている。県は医療や経済界との意見交換を踏まえ、21日の県対策本部会議で対処方針を決定し、会食の人数や時間制限などを県民に要請する方針だ。

 一方、まん延防止等重点措置の要請や、営業時間短縮など、協力金の支給などが伴う営業制限は見送る。20日は全国で過去最多の15万人以上の感染者数を記録したが、政府も「重症化リスクのある高齢者を守ることに重点を置く」(松野博一官房長官)として、行動制限には消極姿勢だ。制限を求める医療界と、経済活動の継続を求める経済界との板挟みで、県は難しい判断が迫られる。

 病床逼迫

 医療の逼迫(ひっぱく)度は、日を追うごとに厳しさを増している。県内は20日時点で、県全体のコロナ病床使用率は75・3%に上った。19日に開かれた専門家会議では、医療界から「このままいけば破滅する」との厳しい意見が上がるなど、県に対してより厳しい制限を求める声が上がった。

 だが、国が重点措置などの行動制限に抑制的な方針を示す中、県が独自で経済活動を止めた場合は、休業補償などを自主財源でまかなう必要があり、予算確保が大きな障壁となる。県首脳は「国は、都道府県がまん防の要請をしていないと言うが、休業や行動制限を掛けて、財源が確保できるならば、そうしてくれ、と言いたい」と本音を漏らした。

 不満

 医療界と対をなす意見が上がったのは20日に開かれた経済関係団体会議だった。医療界から飲食店の利用人数やアルコール提供の制限を求める声が上がったことに対し、県飲食業生活衛生同業組合の鈴木洋一理事長は「飲食業者は2年半もの間、協力してきたのに、医療界がどれだけ対策したのかは見えてこない」と強調した。急激な感染拡大は、厳しい制限を求める医療界と経済界の意見対立を表面化させた。県の支援策に対しては、経済界内部でも一部業界への不公平感を訴える意見も出た。

 「原資がないとは言わせない。コロナで、ぼろもうけしている人がたくさんいるじゃないか」。20日夕、県庁前に観光事業者ら約300人が駆け付けた集会で、沖縄ツーリストの東良和会長は不満をぶちまけた。

 コロナ禍で、時短営業や休業要請に応じた飲食事業者には、県内だけで1200億円以上の協力金が支給された。一方、観光業者には同様の支援策は講じられていない。東氏は「一部のコロナ対策にだけ税金がじゃぶじゃぶ使われるのか。島しょ県の沖縄の観光事業者には、隣県割もブロック割も全く意味がない」と窮状を訴えた。

 国との連携

 県は県議会6月定例会で、国の臨時交付金などを原資とし、226億円の補正予算を組んだ。だが、大部分は病床確保とPCR検査費用に充てられたほか、物価高騰対策も内包された。県によると、一般会計予算で機動的に活用できる予備費は5億円しかない。

 長期的な視点を見据えて対策をとりたくても、感染が急拡大すると、国の方針、予算に応じて、県の対応策を決めざるを得ない厳しさも浮かび上がる。県幹部は「難しい話だが、財源の確保はやらなければならない」と強調。その上で「真に効果的な対策をとるためには、国と連携が必要だ」と語った。
 (池田哲平、當山幸都、梅田正覚、武井悠)