【深掘り】沖縄県が「行動制限」を出さずに「イベント対策」に注力を決めた背景


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「医療非常事態宣言」を発出し、協力を求める玉城デニー知事=21日午後、県庁(代表撮影)

 県は新型コロナウイルスのまん延を受けた感染爆発に対する抜本的な対策が見いだせない中、社会経済活動を継続しながらできる限りの対策を実施する姿勢を示した。たとえ強い行動制限を掛けても感染者数の急激な落ち込みには至らないとの見通しがあるからだ。その上で、人が集まると一気に感染が広まることが懸念されるオミクロン株の派生型「BA・5」の特性を踏まえ、大規模イベント対策に注力する。

 日本を含めた海外でも、爆発的感染力を誇るBA.5を一気に沈静化する手だては見いだせていない。県も時短営業を要請する「まん延防止等重点措置」の効果は限定的だとみている。

 県関係者は「海外の例をみても、ウィズコロナを続けると感染拡大は2カ月は続く。仮に2~3週間で収まるならば、スパッと行動制限を掛けるのは有効だが、そうはならない」との見通しを示した。その上で「そうなると対策の主戦場は『イベント』となる」と強調した。

 松野博一官房長官は重点措置などを念頭に「新たな行動制限を行わない」との姿勢を示した。国も抜本的な対策を示さない中、爆発的感染が起きた沖縄では、ともに疲弊した医療界と経済界の不満が積もった。このため医療界は行動制限を求め、経済界は社会経済活動の維持を求めるなど相反する要望が上がった。

 たとえ重点措置などの強い行動制限を掛けたくても県には法的根拠や財源の裏付けがなく、板挟み状態に陥った。玉城デニー知事は「それぞれが苦しい立場にあり、『声を上げておかないと政府には届かない』との思いの表れだったと思う。双方とも県民の暮らしを守りたいとの思いからで、お互いの信頼は全く崩れていない」と双方の立場をおもんぱかった。

 その上で「政府を挙げて、(今後の対策の)方向性を確認することが一番重要だ。沖縄県からも声を上げていきたい」と述べ、政府の対処方針の在り方に疑問を投げかけた。
 (梅田正覚、武井悠)